墓じまいにかかる費用相場は?何にいくらかかるか知ってますか?
- 2024年07月29日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
墓じまいとは、お墓を解体して、墓地区画を霊園の管理者に返還することです。解体した墓石は、新たな墓地に移設するか、あるいは処分をします。お墓の中の遺骨は新しいお墓に埋葬するか、あるいは永代供養にします。
近年この墓じまいが増えています。核家族化、少子高齢化、都市への人口流入など、さまざまな理由によってお墓の維持管理が困難になった人たちが、自分たちの住まいの近くにお墓を移動しようと考えるからです。
墓じまいは、人生で一度経験するかしないかといっていいくらいのものです。そのため、施主は墓じまいのために何をしなければならないか、そして費用がどれくらいかかるのか、見当もつかないでしょう。
この記事では、墓じまいにかかる費用とその内訳について、わかりやすく解説していきます。
目次
墓じまいにかかる費用の内訳
ひとことに「墓じまい」といっても、しなければならないことがたくさんあり、それぞれに費用が掛かります。費用の内訳は、主に次の5つに分けられます。
- 移転先のお墓の用意
- 墓地の返還手続き
- 改葬許可申請
- 寺院による開眼供養や閉眼供養
- 石材店による墓じまい工事
この中で、特に大きな割合を占めるのが①と⑤です。
移転先のお墓の選択肢として、新たな墓石を建てる、いまある墓石を移転する、納骨堂、樹木葬などの選択肢が挙げられ、どれを選ぶかによって費用が大きく変わります。
また、現在あるお墓の墓じまい工事も、墓石の基数や墓地の面積、周辺環境などによって費用が大きく変動します。
その差は大きく、安く抑えようとすれば数十万円程度で済みますし、内容によっては100万円から200万円もの費用がかかることも少なくありません。
墓じまいにかかる費用について、次章から詳しく解説していきます。
移転先のお墓の用意
墓じまいを、ただお墓を解体撤去すればいいとだけ考えている方が少なくないのですが、まず先に考えなければならないのは、中にあるお骨をどこに移して供養するか、ということです。移転先のお墓の選択肢は主に6つあり、それぞれ費用が大きく異なります。
墓地区画を購入してお墓を移設する
自分たちの住まいの近くに新しい墓地区画を購入して、故郷のお墓を移設するという方法です。
新しくお墓を作る必要がないものの、墓じまいの工事費用に加えて、新しい墓地の費用や運搬費用や現場での据付工事費用が発生します。
また、新しい墓地区画に、いまのお墓がきれいに納まるとも限りません。場合によっては墓石の加工や部分的な新調が必要なこともあります。
費用相場は墓地区画と据付費用をあわせて100万円~200万円です。
墓地区画を購入してお墓を新しく建てる
いまあるお墓を処分して、新たに墓地を買い、お墓を新調するという方法です。
墓地代と墓石代の両方が必要となるため、どうしても割高になりがちですが、最近では、墓石の形も多様化しており、洋風のものからコンパクトなものまで、多彩な色やデザインの中から選べます。
伝統的なお墓を選ぶか、現代的なコンパクトなお墓を選ぶかで費用は大きく異なってきますが、それでも墓地区画と墓石代をあわせると、100万円~200万円くらいが相場でしょう。
納骨堂
納骨堂とは屋内に設置された納骨壇にお骨を納めるタイプのものです。
主にお寺が管理していることが多いのが特徴です。天候に左右されることなくお参りができること、お寺の手厚い供養が受けられること、いざという時も墓じまいの心配がなく、永代供養をお願いできることなどから、多くの人に選ばれています。
「ロッカー型」「仏壇型」「自動搬送型」などがあり、収骨できる数によって費用も変わってきます。一般的な相場は50万円~100万円です。
樹木葬
樹木葬とは、石ではなく樹木や草花を用いたお墓のことです。花や緑に囲まれて、落ち着いた空気の中でお参りができるだけでなく、墓石を用いないことにより安価に購入できることから人気を集めています。
また、樹木葬の多くは、墓じまいが不要で、永代供養を含んだものとしてプラン設計がされているので、あと取りのいない人、子どもに迷惑をかけたくないと考える人のニーズにも応えています。
個別区画を購入する「個別型」、シンボルツリーの周囲のカロートに納骨する「集合型」、一つの場所に他のお骨とともに埋葬する「合祀型」、自然の深い里山に埋葬する「里山型」などによって費用は異なります。一般的な相場は50万円~100万円です。
永代供養
永代供養とは、自分たちで供養ができなくなった遺骨をお寺や霊園に預けて、永代にわたって供養を任せることです。遺骨は、最終的に集合墓の中に合祀(他の人のお骨と一緒に埋葬すること)されます。
葬儀後、お墓を持たずに永代供養にする人もいれば、墓じまいをしたあとに永代供養をするなど、利用者もさまざまです。
戒名の有無、遺骨の保管期間、銘板への彫刻などによって費用は異なりますが5万円~30万円が相場です。
散骨
散骨とは、お墓を持たずに、遺骨を海や山に撒く葬法のことです。
散骨をするためには、必ず遺骨を粉末状にしなければなりません。粉骨キットを購入して、自分で行うこともできますが、散骨専門業者に依頼する人がほとんどのようです。
散骨は海、山、川などどこでもできますが、ほとんどの業者が海洋散骨を実施しています。山や川といった陸地は必ず土地の地権者がおり、誰かの土地に遺骨を撒くことに抵抗を感じたり、場合によってはトラブルに発展するケースもあるからです。
業者に散骨を委託する「委託散骨」、複数の家族が一艘の船に乗り合わせる「合同散骨」、ひとつの家族が一艘の船をチャーターしておこなう「個別散骨」などがあり、プランによって費用は異なります。相場は5万円~30万円です。
墓地の返還手続き
墓じまいの実施を決めたら、墓地の管理者にその旨を伝え、返還手続きをおこないます。
基本的には費用はかからない
墓地の返還そのものに対して、基本的には費用はかかりません。霊園が定める書式に必要事項を提出し、あとはきちんと墓じまいをして、墓地を更地に戻すだけです。
なお、墓地の所有者はあくまでもその墓地の管理者であり、私たちは「使用権」を取得しているだけです。墓地が不要になったからといって、他人への譲渡や転売は禁止されているので、しっかりと認識しておきましょう。
離檀料が必要な場合
ただし、お墓がお寺の境内にあり、墓じまいとともに檀家関係を解消してしまう場合は、「離檀料」を納めなければならないかもしれません。
離檀料には明確な決まりがなく、お寺の方針、家族の想い、両者の関係性によって実にさまざまです。金額を決めているお寺もあれば、離檀料を不要としているところも少なくありません。一部のマスコミが報じたように、高額な請求をするところもあるようですが、統一的な傾向がないというのが正直なところです。
必ずしも包まなければならないわけではない離檀料ですが、これまでご先祖様の供養でお世話になったお寺への感謝を込めるという意味では、最後のお布施として手渡すのがきれいかもしれません。
お布施とはそもそも包む側の気持ちを表すものなので、定価も相場もありません。もしもお寺から金額の提示がなければ3万円~10万円くらいの範囲でよいでしょう。
改葬許可申請
「改葬」とは、遺骨を他の場所に移すことで、改葬をするには役所に出向いて手続きをしなければなりません。申請に必要なのは次の3つの書類です。
- 改葬許可申請書(改葬元の役所から入手)
- 埋葬証明書(改葬元の墓地の管理人から入手)
- 受入証明書(改葬先の墓地の管理人から入手)
改葬許可証に関しては交付手数料が基本的に不要です。
その他の埋葬証明書や受入証明書も、基本的には費用は掛かりません。受入証明書は、新たな墓地の使用許可証などのコピーで済み、埋葬証明書も「改葬許可申請書」に現在のお墓の管理者が「埋葬証明」のサイン(印鑑)がほとんどだからです。
ただし、自治体によって対応が異なることもあり得るので、念のため、事前に役所に問い合わせていたほうが確実です。
開眼供養/閉眼供養に必要な僧侶(お坊さん)へのお布施の相場
開眼供養
「開眼供養」とは、新しいお墓や仏壇などを購入した際に僧侶(お坊さん)に読経をしてもらうというものです。「魂入れ」や「性根入れ」などとも呼ばれます。
浄土真宗では開眼供養とは呼ばず、ご本尊である阿弥陀如来を自宅に招き入れることを感謝する「入佛慶讃法要)がおこなわれます。
開眼供養はその名の通り「目を開く」と言う意味があり、仏像作りにおいて最後に行う目を描き込む作業に倣い、仏壇の中に祀られる仏さまの仏像や、ご先祖さまの位牌に魂を込める儀式です。
開眼供養のお布施の相場
開眼供養は僧侶に読経してもらうことになりますのでお布施が必要です。
自身の気持ちに照らし合わせて用意するお布施には、本来相場はありません。いくら包めばよいか分からないときは、まずは僧侶に聞いてみましょう。金額を提示するお寺もあるようです。
僧侶に確認した上で、それでも「お気持ちで」と言われたならば、1万円から5万円が相場なので、これを参考にしてお布施を用意しましょう。
また、お墓まで出向いてもらう場合は、「御車代」を別途用意します。境内墓地や納骨堂など、お寺の敷地内で供養を行う場合は、御車代は不要です。
また、食事代として「御膳料」を別に包むこともあります。
閉眼供養
開眼供養に対し、墓石の中の魂を抜くことを「閉眼供養」と呼びます。閉眼供養をしないことには、お骨を取り出すこともできませんし、石材店もお墓の解体に応じてくれません。
閉眼供養のお布施の相場
閉眼供養のお布施も、開眼法要と同額で、1万円~5万円が相場です。
お墓の解体、撤去にかかる石材店への費用の相場
墓じまいの費用は、墓石の大きさや基数、その他の石材の量(燈籠、玉垣、霊標など)、そして墓地の面積や残土の体積、墓地環境(急な斜面か、重機が横付けできるかなど)などによって、費用はさまざまです。
都心にあるようなコンパクトな墓石と、山裾にある大きなお墓だと、手間と費用に雲泥の差が出ます。まずは石材店に同行してもらい、見積もりをしてもらいましょう。
また、墓地や霊園によっては、石材店が指定されていることがありますので、墓地の返還手続きの際に、業者について確認しておきましょう。
解体、撤去の費用の相場
墓じまいの費用は、お墓によって大きな開きがあるので、相場を伝えることが実に難しいのですが、それでもひとつの目安を示すなら、1平方メートル(1m×1m)あたり12万円程度と言われています。1坪の大きさになると40万円とされているので、まずはあなたの墓地の幅と奥行きを測って、面積を割り出してみましょう。
しかし、先ほども解説した通り、同じ面積の墓地であっても、お墓の大きさや基数、その他の石材や残土の量などによって、費用が安くなることも、高くなることもあります。
運搬費用の相場
墓石を移設する場合は運搬費用が必要です。移動距離と墓石の量によって金額は変動します。運搬費用やお骨の埋葬などを別料金にしているか、全てを含む費用としているは、石材店によって異なりますので事前の確認が必要です。
また、霊園が指定されている場合、解体撤去の業者と、新たな墓地での据付施工の業者が異なることとなります。この場合、どちらが石材を運搬するか、それぞれの石材店と調整することとなります。
遺骨のメンテナンス費用と相場
長い時間かけてお墓の中に眠っていた遺骨が、取り出してみると泥をかぶり、あるいは水に浸されて汚れているというケースは実に多くあります。
新しく用意したお墓でも、土の中に還す場合(墓石や樹木葬など)はよいのですが、納骨堂のように、屋内施設で長時間遺骨を保管する場合は、遺骨をきれいにするよう求められることがあります。
具体的な方法としては、骨壷の中にある水分を抜き洗浄や乾燥、殺菌をおこないます。
こうした「洗骨」を専門の業者に依頼した場合、2万円から3万円が費用相場です。
また、土葬の地域だと土汚れがひどいため追加料金が必要な場合もありますし、「再火葬」と言って火葬のし直すを求められるケースもあります。
経年劣化によって骨壷にヒビが入っていた場合には、新たに骨壷を購入しなければなりません。
薬品などを使用して真っ白なきれいな状態にしなくても良いというのであれば、洗骨は個人でも可能です。
ネットに入れてきれいになるまで水で洗い、水切りをした後に2日以上天日干ししてあげれば完了です。ネットなどの道具の費用だけで済むので安価です。
墓じまい代行業者に払う費用相場(代行をお願いする場合)
墓じまいにはさまざまな準備や手続きが必要となるので、とても自分だけでは出来そうもないと感じてしまう方も少なくありません。
そういった方の強い味方となってくれるのが墓じまい代行業者です。ただし、代行業務の範囲は業者によって異なります。
墓じまい代行業を営んでいるのは、墓石の取り扱いに強い石材店、行政手続きの代行ができる行政書士、その他、こうした石材店や行政書士と提携している終活カウンセラーなどが挙げられます。
改葬許可申請を行政書士に代行してもらう場合の費用相場は3万円から6万円程度です。墓じまいに関わる手続きすべてを代行してもらった場合は、15万円~30万円が相場です。
ただし、くれぐれも解体撤去するお墓の規模によってはこればかりでないということを、強調しておきます。
まとめ
近年増えてきている墓じまいにはさまざまな手続きが必要となり、それぞれに費用が発生します。
墓じまいの費用の相場というものは規模やその後の供養方法などによっても異なり難しいので事前にしっかりとシミュレーションしておく必要があるでしょう。
墓じまいは無縁墓を防ぐためにも必要なことです。この記事を参考にしていただいて、大切なご先祖様のお墓や遺骨をどのようにしていくか、考えていただければ幸いです。
墓じまいに関するよくある質問
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監修者のコメント
岩田 昌幸 一般社団法人 葬送儀礼マナー普及協会
墓じまいとは、それまで使用していた墓所(墓地の区画)を返還すること。そのためには、遺骨を取り出して別の場所に移動し、墓所を更地にして戻さなければなりません。何柱も遺骨がある場合、誰の遺骨なのかわからなかったり、骨壺ごと納められていない場合は、遺骨がどこにあるのかわからなくなっているケースも。不明な場合は墓じまいの依頼をする石材店に、手続きや工事などを相談してみてください。