墓じまいとは?費用や流れと手続きについて詳しく解説
- 2022年11月04日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
終活をしている人や葬儀方法の検討をしている人の中には「墓じまい」という言葉を見聞きした事のある人もいるのではないでしょうか。
墓じまいは現代に即した形の供養方法であり、近年では墓じまいを行う家庭も増加してきています。しかし、意外にも墓じまいという言葉の意味を知っている人はそう多くありません。
今回は現代における先祖供養の形として有用な墓じまいについてその意味やかかる費用、その手続きの流れと実際の手順をご紹介します。一族の今後にも関わる事ですので、この記事を参考にして家族の人と相談してみて下さい。
目次
墓じまいとは?
墓じまいとは、現在抱えているお墓を片付けて、お寺や墓地の管理者に土地を返上する事で、「遺骨の引越し」を行う事です。
少子化や核家族化が進む日本では、2014年頃から墓じまいを行う人が増えてきたと言われています。加えて暮らしが豊かになるに連れて現代人のライフスタイルも大きく変化し、墓参りをする人やその機会も全体的に減少傾向です。
少子高齢化の影響
お墓は遺骨を収めたら終わりではなく、維持管理する為の手間や費用もかかります。しかし、近年では少子高齢化に伴い、負担を感じて墓じまいをしたり、純粋に跡取りがおらず墓じまいせざるを得ないというケースも見受けられます。
少子高齢化の影響はお墓を管理する側だけではなくお墓参りする高齢者にも現れており、特にお盆の時期に炎天下の中お墓参りする事が体への負担が大きいという人も増えています。
こうした背景からお墓から遺骨を引越しさせ、供養するという需要が増えていると言えるでしょう。
無縁墓化の増加
お墓は跡取りが絶えたり縁故者がいなくなってしまうと「無縁墓」という扱いになります。
墓地の管理をしているお寺や業者は毎年墓地の管理費を収集していますが、無縁墓になってしまうと費用の回収ができなくなります。そこで管理者は官報に掲載したりお墓に立て札をして一年間ほど縁故者を募ります。
そこで申し出がなければお墓は撤去され、取り出された遺骨は他の無縁墓の遺骨と一緒に合祀墓(ごうしぼ)という場所へ葬られるのです。
墓石業者や自治体の調査によると、既に40%ものお墓が無縁墓化しているとのデータもあります。
今は大丈夫でも、いずれ自分や先祖代々の墓が無縁墓になってしまうかもしれないという怖れが、自分が元気なうちに墓じまいをしたいという、現在の流れにつながっているのです。
墓じまいを行ってお墓を更地に返す事は、ネガティブな事ではありません。墓じまいを行う事でご先祖様の供養を管理できますし、今後の一族や自身の葬儀方法も幅が広がります。
墓じまいにかかる費用
墓じまいに関する合計費用は埋葬方法や各自治体・お寺などで上下する為一概ではありませんが一般的には350万~100万円程度で行われています。
墓じまいの費用の内訳
1.手続きに必要な書類にかかる費用
別の移転先へ改装する場合は「改葬許可証」、新しいお墓に移転の場合は「受入証明書」「埋葬証明書(納骨証明書)」などが必要になります。自治体によりますが、多くは無料の場合が多いです。
2.墓じまいを行うお寺へのお布施(離檀料)
菩提寺にお墓があった場合には、原則として家がそのお寺の檀家になっているので、その寺の檀家から離れるための「離檀」の手続きが必要です。そのほかお墓から魂を抜く「閉眼供養」を行う場合もあります。それらを合わせて、今までお世話になったお寺に対する感謝の気持ちとして、「お布施」という形で離檀料を支払います。
離檀料はお寺との関係や格式、その地方によっても異なりますが、一般的には閉眼供養などの法要と合わせて、10〜40万程度と言われています。
3.墓の解体・撤去作業にかかる費用
墓じまいをした後は、石材店などの専門業者に依頼して墓地の解体・撤去作業を行います。費用は1平方メートル当たりの料金単位で計算される事が一般的です。また重機が入らない場所では料金が高くなります。業者により異なりますが、相場は1平方メートル当たり8〜15万円です。
4.移転先のお墓の管理者
一般的なお墓への場合は、開眼供養のお布施代が3〜10万円、その他に墓地費用、墓石代などが100〜300万円ほどかかります。散骨の場合は3〜30万円程度です。
墓じまいの補助金制度
数は多くはありませんが、自治体によっては墓地の撤去などに補助金を出しているところもあります。その有無については、墓地を管理している自治体に問い合わせましょう。
墓じまいの手順/流れ/必要な手続き
墓じまいには踏むべき手順が多く存在しますが、一連の流れを把握してしまえばそんなに難しいものではありません。正しい手順と流れを身につけて墓じまいへの理解を深めましょう。
1. 現在のお墓の中を確認する
まずは墓じまいを行うお墓の中を確認しましょう。
・誰の遺骨が納められているのか
・大きさや数はどうか
・埋葬後の経過年数や破損
・汚れなどの状態
・火葬済みであるかどうか
基本的な確認事項としては以上のようなポイントが挙げられるでしょう。
古い遺骨などはごくまれに土葬、もしくは火葬が十分でない可能性もあるので念のため確認しておく事が大事です。
遺骨が複数埋葬されている場合などはどの遺骨が誰のものであるか、分かりやすくしておきましょう。
2. 遺骨の供養方法を決める
遺骨を取り出したら各遺骨の埋葬方法を決定しましょう。
改葬
改葬とは遺骨を他のお墓に移して供養する事を指します。通常の改葬では、古くなったお墓から新しいお墓に移すという事が主な目的とされています。なかでも、比較的管理費の安い公営共同墓地への埋葬がポピュラーになっています。
永代供養
永代供養はお墓の管理者に代わって寺院が管理・供養を行ってくれるシステムです。お墓参りする人がいない、いても住まいが遠方または高齢などの理由で訪問できない様な場合には、この永代供養がよく選ばれます。
費用的には改葬よりも安く済むケースが多いでしょう。
委託費用は大きく分けて以下の3段階です。
・個別の骨壷を永代に渡って供養、合祀(他の人の遺骨との合同供養)されない
・納骨時には個別であるが、33回忌や50回忌などの節目で合祀に切り替え
・最初から合祀で供養
上から順番に費用が高くなっています。合祀されてしまうと遺骨を取り出すことができなくなってしまうので、永代供養先に預ける前にしっかりと家族間で方針を話し合っておく事が大切です。
散骨
海へ遺骨を撒いたり、最近ではバルーンに乗せて成層圏で遺骨を撒くような事もできるのが散骨です。
大きく分けて3つのパターンが考えられます。
・個別の家族で散骨する
・複数の家族合同で散骨する
・業者に委託して散骨する
上から順番に費用が高いケースです。散骨の場合には遺骨を乾燥させて細かく砕いておく事が必要になります。
手元供養
遺骨を納骨せずに自宅や自分の身の回りに置いて管理するのが手元供養という方法です。
墓じまいで取り出した遺骨すべてでなくても、改葬や散骨を行いつつ一部の遺骨だけ手元供養として残しておく人も増えています。
ペンダントなどのアクセサリーに加工してもらう事も可能です。
3. 移転先や散骨業者を探す
先にある程度業者の目処や見積もりを立てておく事で、親族や相続人と相談する時に話をスムーズに進める事ができます。
4. 移転の場合は「受入証明書(使用許可証)」をもらう
改葬には、「移転先」の寺院や墓地が受け入れを許可した事を示す「受入証明書(使用許可証)」が必要になります。移転先のお墓の管理者に連絡して発行してもらいましょう。
手元供養や散骨も併せて予定している場合には、実際に移転の有無が確定するまで発行できない場合もありますので注意してください。
5. 親族/相続人に相談し許可をもらう
お墓とは先祖代々受け継がれているものであり、直系の親族以外に伯父伯母の家系などの親戚が携わってる事も多いです。例え自分がお墓の管理を任されている身だとしても、独断で墓じまいに踏み切る事は親族間でのトラブルの元になります。
必要であれば親族の意見を取り入れて内容を整えていきましょう。
6. 現在の墓の管理者に墓じまいの連絡をする
多くの場合はお寺や霊園です。連絡を入れて墓じまい専用の書類を送付してもらいます。
7. 現在の墓の管理者から「埋葬証明書(納骨証明書)」をいただく
埋葬証明書とはお墓に誰の遺骨が収められているかをお墓の管理者が証明する書類です。
公営霊園の場合は運営元である市区町村に問い合わせてみましょう。
8. 現在の墓がある市区町村役場から「改葬許可申請書」を取り寄せて記入する
受入証明書と埋葬証明書の2つが揃った所で、「現在のお墓」がある市区町村の役所から改葬許可申請書を取り寄せて必要事項に記入を済ませます。
この書類は墓じまいの後に改葬や永代供養、納骨堂へ遺骨を移す場合に必要となる書類です。
9. 現在の墓がある市区町村から「改葬許可証」をいただく
「受入証明書」「埋葬証明書」「改葬許可申請書」の3枚を「現在のお墓」がある市区町村の役所に提出して改葬許可証を発行してもらいます。
10. 現在の墓から遺骨を取り出し、閉眼供養を行う
閉眼供養は「魂抜き、お精抜き(おしょうぬき)、御霊抜き」などとも呼ばれる儀式で、お墓に宿った故人の魂を抜き取りお墓を単なる物体に戻す作業です。
書類が一通り揃ったら、現在のお墓から遺骨を取り出して閉眼供養を行います。
その後、お墓の管理者に改葬許可書を提示し、遺骨を取り出しましょう。
11. 離檀をする
お寺から現在のお墓を撤去して遺骨を移動させる為には、檀家から離れる為の「離檀」という手続きが必要になります。
今までお世話になったお寺に対するお布施という意味で、通常は費用がかかります。
お墓の管理をしてくれていたお寺に確認してみましょう。
その際にはいきなり離檀という言葉を使うのではなく、墓じまいの意向を伝えた上で離檀へ話を運ぶとスムーズです。
12. 石材店を探す
お墓の移動・撤去に関する作業には専門業者の協力が必要になります。自分で探す前にお墓の管理者と提携している石材店がないか確認しておきましょう。
お墓の状態や敷地内の構造を理解しているかどうかが見積もりにも大きく関わってくるためです。
13. 石材店に現在の墓の解体、撤去をし更地にしてもらう
依頼先が決まったら、お墓の外柵、カロートと呼ばれる納骨室、お墓の竿石などを小型のクレーンを用いて撤去してもらいましょう。
作業を終えたらお墓の管理者に永代供養権を返上します。なお、散骨や手元供養ですぐ改葬を行わない場合には、「遺骨引渡し証明書」をお墓の管理者に発行してもらうとトラブルの予防になります。
14. 改装の場合は移転先に「改葬許可書」を提出する
改葬を行う際には「新しい納骨先」の管理者に改葬許可書を提出しておきます。
15. 遺骨を埋葬し開眼供養を行う
新しい納骨先へ遺骨を納めたら開眼供養を行い、新しいお墓にご先祖様の魂を宿してもらいます。
以上が墓じまいに於ける一連の流れと手順になります。書類を用意・提出する際は「現在のお墓の管理者」「移転先のお墓の管理者」「各市区町村」のどこで発行、どこへ提出するものであるかをしっかり把握しておきましょう。
墓じまいを行う際に必要な業者や機関
墓じまいには土地管理や供養、石材処理など様々な専門家の協力が必要不可欠です。いざ墓じまいを行う事になった時、慌ててしまわないように必要な業者や機関をまとめて把握しておきましょう。
僧侶(お坊さん)
遺骨を取り出す際の閉眼供養や新しく納骨する際の開眼供養は各お寺の僧侶にお願いする事になります。この時、手続きを滞りなく済ませる為にお布施を用意しておく事も留意してください。
一般的には離檀の際にも離檀料がかかりますので、檀家となっているお寺に確認しておきましょう。
現在のお墓の管理者
埋葬証明書や各種必要書類の発行を行ってもらう他、墓じまいの最初から最後まで関わる事になるのが現在のお墓の管理者です。良好な関係を築いてスムーズな手続きが可能な状態にしておきましょう。
石材店
実際の墓じまいの撤去作業を行ってもらうのは石材店になります。お墓の管理者と長い付き合いや提携関係にある石材店があれば、積極的に問い合わせてみると良いでしょう。
市区町村役場
改葬許可申請書の取り寄せや改葬許可書の発行、公営霊園の場合は埋葬証明書の発行など市区町村の役所には書類手続きで何かとお世話になる事になります。
改葬許可申請書は各自治体によって様式が異なるので、不明な点は迷わずに担当窓口へ問い合わせるようにしましょう。
粉骨業者や散骨業者
散骨は個人で行う事を禁止する法律が無いので自主的に行う事も可能ではありますが、儀式としての形式を取りたいのであればやはり業者に依頼して行う方が良いでしょう。
散骨やアクセサリー加工へ持ち込む為に遺骨を粉末状にする作業は、親族が行うには精神的な負担も大きく、仕上がりから考えても専門の業者に依頼する事が現実的です。
移転先のお墓の管理者
新しい納骨先の管理者はこれから遺骨を管理してくれる新しいパートナーとも言える存在です。
改葬や永代供養で遺骨を移転させる場合には、実際に霊園へ足を運ぶなどして慎重な移転先選びを心がける事が大切です。
墓じまいのトラブル
年々、墓じまいをする人が増えていく傾向に比例し、それに関わるトラブルも増えています。お墓はひとりのものというより家族や一族のものです。ひとりで安易に墓じまいを決めてしまうと思わぬトラブルが起こってしまうことがあり、注意が必要です。
おもなトラブルの原因としては
- 家族や親族の合意を得ずに墓じまいをした
- 墓じまいの費用について親族と行き違いが生じた
- 高額な離檀料を菩提寺から請求された
- お墓の解体・撤去に関わる費用を相場よりも高く請求された
などがあります。
トラブルを避けるためには、周囲とのしっかりとしたコミュニケーションや事前の情報収集を怠らないようにしましょう。実質的にお墓を管理しているのは自分しかいなくても、自分の独断で決めてしまうとのちのちトラブルにつながる可能性が大きくなります。
墓じまいの手続きなどを代行してくれる業者
墓じまいの流れや手順は分かったけどその上で自分達で行うのは難しそうだ、という人も少なくないでしょう。
墓じまいには代行サービスが存在しており、手続きや作業を委託する事が可能となっています。
ただし、代行にもいくつか種類があり必要に応じて適切な業者へ依頼しなければ意味がありません。
各業者の代行範囲をしっかり確認しておきましょう。
手続きに必要な書類の記入を代行してくれる行政書士
必要事項の多い改葬許可申請書の記入や各種書類手続きのみを代行してくれるのが行政書士です。
忙しくてなかなか書類の発行や提出、記入にまで手が回らないと言った時には行政書士を頼ると良いでしょう。
寺院との交渉を代行してくれる業者
檀家の家庭が墓じまいするにあたってお寺とのやり取りは避けては通れません。墓じまいの理由についてもきちんと話す必要があります。
しかし、中には寺院存続の為に高額な離檀料を請求されるケースも存在するのです。遺族からすれば故人の供養でお金の揉め事は避けたい所と言えるでしょう。
こうした場合に事を穏便に、かつ墓じまいに対して協力もらえるよう交渉してくれる専門の業者が存在しています。多くは交渉事の専門家である弁護士が請け負っています。
離檀料以外のトラブル相談にも乗ってもらえるので、自分での解決が難しそうであれば積極的に頼ってスムーズに話を進めてもらいましょう。
遺骨の一時預かり、保管をしている業者
墓じまいをする事は決まったけれど遺骨の埋葬方法が決まっていない、または移転先が決まっていなかったり空きが出るまでに期間があると言ったケースも考えられます。こうした場合には遺骨を一時的に預かってくれる業者を頼りましょう。
料金や内容などを見比べて必要に応じて利用してください、ただし、保管後一定期間を過ぎてしまうと自動的に合祀墓で永代供養となってしまう内容のサービスもあるので注意が必要です。
全ての手続きを代行してくれる業者
書類の発行や提出、墓石の撤去に納骨まですべての代行を請け負う業者も存在しています。この場合は石材店や葬儀屋がお抱えの行政書士と共に作業を進めるケースが多いです。
代表的な代行パターンは以上の4つになります。代行と一口に言ってもカバーしている範囲は様々なので、まずは墓じまいのどの部分を代行して欲しいのかを明確にしておきましょう。その上で希望範囲をカバーした業者を選んで有効活用してみてください。
まとめ
今回は現代の供養の形として浸透しつつある墓じまいについて、費用やその流れと手続きについてご紹介しました。
一口に墓じまいと言っても取り出した遺骨の供養方法が数パターンあり、手続きや作業を行ってもらう依頼先・依頼内容でも料金が大きく上下します。
墓じまいという行いがそれだけ多様なニーズに即した形になっている事がうかがえるでしょう。しかし一律に語る事ができないがゆえに、親族との綿密な話し合いは墓じまいにおいて非常に重要なウェイトを占めています。
お墓を管理して守っていく事は簡単な事ではありませんが、せっかくお墓があってもお参りする人や機会がなければ持ち腐れとなってしまいます。ご先祖様に寂しい思いをさせたくない、自分がお墓に入った時にちゃんと管理されているか不安だ、跡取りが絶えてしまったなど、墓じまいを検討するにあたっての理由は人それぞれでしょう。
現代では様々な供養の形式がとられており、お墓に対する考え方も多様化しています。将来を見据えてお墓をどうするか、この機会に兄弟姉妹や親族と話し合ってみるのも良いのではないでしょうか。
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