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献体とは?登録条件や献体した場合の葬儀の内容を解説

献体とは?登録条件や献体した場合の葬儀の内容を解説
  • 2024年10月09日
この記事のポイント

献体は医学研究のために遺体を提供する行為で、申込書の記入から始まります。年齢制限や報酬はなく、感染症や遺族の反対で献体できない場合もあります。
大学が火葬費や搬送費を負担しますが、葬儀費用は含まれません

自身が亡くなったあとに、医学のために体を提供する献体希望者が増加しています。

献体を検討するうえで、どのような手続きや流れで登録を行っていくのか気になる方もいらっしゃるでしょう。また、献体を行うにあたって「お葬式はできるのか?」「お葬式に費用はかかるのか?」など疑問に感じることもあるかもしれません。

この記事では、献体の手続きの方法や登録方法、お葬式の種類や費用などを紹介します。

記事の監修

人はなぜ弔い、弔われるのか、葬送儀礼を意味のある営みとして理解し、私たちは次世代へ伝えていきます。葬送儀礼マナー検定実施中。

献体とは 

献体とは、自分が亡くなった場合に体を無料・無報酬で提供することをいいます。

ここでは、献体について詳しく解説していきます。

献体のはじまり

献体は解剖実習に必要な遺体が不足したことをきっかけに、医学教育の危機だと考えた人たちによって献体運動が盛んになったことが始まりです。

昭和30年代から40年代にかけて、日本は高度成長期を迎え、人口も増加の一途をたどりました。

医学や歯学の大学が増設されるに従って学生数も増え、これにともない解剖実習に必要となるご遺体が不足しました。そこで東京大学を起点にした「白菊会」や、名古屋大学を起点とした「不老会」などを中心に献体運動がはじまり、献体が社会的に認知されるようになりました。

出典:宮崎大学白菊会 献体のはじまり

献体の目的

献体は医学や歯学の大学において、解剖学の教育や研究に役立たせて医療の発展を図ることが目的です。医師や歯科医師を目指す学生にとって実際のご遺体から学べることは多くあり、現在の医療も献体が貢献しています。

また、「将来の医療に役立てて欲しい」という故人さまの意志は、学生が献体に感謝の気持ちを持って責任や自覚を持つきっかけにもなるでしょう。医療の発展のために、解剖学の実習を充実させることは必要不可欠といえます。

なお、献体を行うためには、生前から献体したい大学や団体に登録しておく必要があります。故人さまや故人さまの関係者の意志に従い、大学に提供することで献体が実行されます。

献体登録の手順

献体登録の手順

献体登録の手順の一例を具体的に解説していきます。

参考:公益財団法人 日本篤志献体協会 篤志献体団体 千葉白菊会

申込書を取り寄せる

まずは献体手続きを行っている、お住まいの都道府県にある医科・歯科大学、または関連団体を探します。希望の機関に問い合わせて申込書を送ってもらいましょう。

申込書を記入する

申込書に必要事項を記入します。主に次に挙げる事柄を記入し、同意の意思を示します。

<記入事項>

申込者本人の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、捺印

遺骨の返還先となる人の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、申込者本人との関係性、捺印

同意者の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、申込者本人との関係性、捺印

<同意事項>

献体登録を家族全員に告知していること

感染症や外傷などにより、献体の受け入れができない可能性があること

遺体が教育機関による研究に供されること

必要事項を記入した申込書を、献体を希望する期間に返送します。

献体登録証の発行

申込が受理されると、献体登録証が発行されます。献体登録証には、登録先の団体名やお亡くなりになったときの連絡方法などが書かれています。不慮の事故に備えて常に持っている必要があります。

本人が息を引き取ったら、ご遺族はすぐに献体登録先へ連絡し、「会員番号〇〇番の〇〇〇〇が亡くなりました」と死亡の事実と献体の意志を伝えます。

献体の流れ

献体登録をしている方がお亡くなりになったら、ご遺族の間で献体に異存ないか確認のうえ、献体登録先へ連絡します。

ご遺族が故人さまの献体に了承したら、書類手続きを行っていきます。この際、ご遺族が用意しなければならない書類は、死亡診断書の写し、印鑑、火葬許可証などです。

火葬許可証は区市町村の役場で死亡届の提出を行うと発行してもらえます。

その際、役場の担当者には火葬ではなく献体する旨をあわせて伝えておきましょう。

なお、献体から遺骨の返還までには1~3年ほどかかります。返還までには防腐処理などの解剖準備に3~6か月、実際の解剖実習期間に3~7か月ほど必要です。

献体の報酬

献体登録してから献体として提供するまでに報酬は発生しません。

その理由は、献体は医療発展を願う無償の心から行うものであるためです。献体をした人のご家族が、献体先の病院で何かの待遇を受けられることもないです。

ただし、ご遺体の搬送費など、献体を行うための経費は大学や団体負担となります。

献体の年齢制限

献体は、年齢制限を設けているところが多いです。例えば、札幌医科大学は70歳以上、不老会は60歳以上としています。

これは、年齢の若い方の場合、献体以外にも臓器移植などのさまざまな方法で医学に貢献できるのに対し、高齢者の場合は選択肢が限られているからだと言われています。

献体の貢献度は年齢に左右されないことから、あえて年齢制限を設けて、ひとりでも多くの方に医学に貢献できるようにしているのです。

献体できない事例

献体できない事例

献体登録をしていても、実際に献体できない事例もあります。

ここでは、献体できない事例を紹介します。

感染症に罹患している

故人が感染症に罹患していた場合、教職員や医学生への二次感染を防ぐために、献体ができない可能性があります。主に次の感染症が挙げられます。

献体できない感染症

臓器提供も希望している

献体による解剖検査は、臓器がすべて揃っている状態が理想です。

もしも臓器提供も希望している場合は、献体登録している団体や病院に相談してみましょう。場合によっては献体できない可能性もあります。

献体に反対する遺族がいる

献体登録をするには、申込時点で本人の家族や関係者の同意が必要です。さらに、本人が亡くなってご遺体を引き取る際に最終確認を実施し、ここでもご遺族や関係者の同意を得なければなりません。

『医学及び歯学の教育のための献体に関する法律』の中にあるように、献体されたご遺体を解剖は、「死亡した者が献体の意思を書面により表示している旨をご遺族に告知し、ご遺族がその解剖を拒まない場合」のみ行ってもよいとされています。

つまり、ご遺族の中に1人でも反対があると、献体や解剖は実行されないのです。

遺体を保存できない場合

ご遺体を安定的に保存できない場合は献体を断られます。

死亡から発見が遅れて腐敗している場合、交通事故などで外傷が激しい場合、手術中または手術直後に亡くなった場合などが挙げられます。

司法解剖や病理解剖を行う

事件性の有無を調べる「司法解剖」や、病状の解明や診療の妥当性を検証するための「病理解剖」などで解剖した遺体は、献体できません。

献体をした場合の葬儀について

献体をした場合の葬儀について

故人さまの献体にあたって、お葬式はどのように考えたらよいのでしょうか。

ここでは、献体をした場合のお葬式について紹介します。

献体の前に葬儀をする場合

献体の前にお葬式を行う場合、逝去後48時間以内に葬儀を終えるスケジュールが適しています

献体ではご遺体の防腐処理が必要になるため、一般的に逝去後48時間以内を献体の目安にしています。

逝去された時間帯によって変わるものの、逝去した当日にお通夜、翌日に葬儀・告別式を行い、そのあとに大学に搬送すれば献体前のお葬式も可能です。

献体の前にお葬式を執り行いたい場合は、献体先へお葬式の日取りや遺族側のご予定を伝え、ご遺体の引取り日時や手順の相談をします。

時間の制約がある中でお葬式の準備を進める必要があるため、直葬のように短い期間で行えるお葬式のプランもよいでしょう。

献体後にご遺体なしで葬儀を行う場合

献体後にご遺体なしでお葬式を執り行うこともできます。

病院から直接ご遺体を搬送して献体し、そのあとに遺影や位牌を中心としてお葬式を執り行うスタイルです。献体の前にお葬式を執り行う場合に比べると、時間の制約を受けないメリットがあります。

一方、献体後のお葬式だと故人さまと対面してお別れをすることはできません。

ご遺体がないお通夜やお葬式となるため、事前に葬儀社や菩提寺がある場合は住職にも相談しておきましょう。

親族によっては、ご遺体がない状態でのお葬式に反対する可能性もあります。お亡くなりになってから献体までには有効期限も設けられているため、親族に早めに相談する必要もあります。

献体後に遺骨を受け取って葬儀を行う場合

献体後に遺骨を受け取ってお葬式を執り行うことも可能です。

ただし、遺骨の返還時期は1年から3年と幅があり、事前にスケジュールを決めることはできません。この場合は、遺骨が戻ってくるまでの間に、どのような供養を行うか家族で話し合っておく必要があります。

遺骨がなかったとしても仏教で戒名を授かることは可能です。四十九日法要で法要を行い、供養する選択肢もあります。

遺骨がないことにネガティブな気持ちが生じる場合は、爪や髪の毛を供養することも可能です。

いずれにしても、献体後の遺骨を受け取ってからお葬式を行う場合は親族に承諾を得ておく必要があります。

また、葬儀社に供養の方法を相談してみるのもよいでしょう。

葬儀をしない選択肢もある

献体後にお葬式をしないという選択肢もあります。

ここでは、お葬式をしない理由や注意点を紹介します。

葬儀をしない理由

献体前後にお葬式をしない理由は、ご遺族の手間や費用の負担を減らすためです。

献体の受け入れは故人さまがお亡くなりになってから48時間以内が適しています。直葬を行うにしてもお葬式の準備を迅速に進める必要があり、気持ちに余裕がなくなってしまいます。

お葬式をしないのであれば、時間に余裕を持って大学に搬送できるでしょう。

また、身寄りのないお年寄りの方の中には、お葬式をしてもらうつもりがないという理由で献体登録している場合もあります。自分が亡くなったあとの対応も大学側で行ってもらえるため、ご遺族に負担をかける心配もありません。

このように、献体をする故人さまやご遺族によってはお葬式を執り行わない方がいいケースもあります。

葬儀をしない場合の注意点

献体前後にお葬式をしない場合の注意点は、菩提寺によっては納骨できないリスクがあることです。通常であれば戒名を受けてお葬式で菩提寺の僧侶が読経し、菩提寺に納骨します。

しかし、献体の場合は宗教的な儀式を行わずにご火葬が必要です。宗教観を大切にする菩提寺の僧侶によっては快く思わず、納骨できなくなってしまう場合もあります。

トラブルを避けるためにも、献体を決めたタイミングで菩提寺に相談しておきましょう。

また、お葬式をせずに献体をするとお亡くなりになったあとにご遺体が搬送されたり、期間が長ければ数年後に遺骨が戻ってきたりします。中には、遺骨が戻ってきても、故人さまと実感できず「お葬式をしておけばよかった」と後悔につながる可能性もあるでしょう。

最後のお別れができなかったと思うことがないように、お葬式をするかどうかを家族や親族で話し合っておく必要があります。

献体を行った場合の葬儀の種類 

献体を行った場合の葬儀の種類

献体を行った場合、ご遺体がないままで行うことも多いため、小規模なお葬式のタイプが選ばれやすい特徴があります。

ここでは、献体を行った場合に選ばれやすいお葬式の種類を紹介します。

家族葬

家族葬とは、故人さまと親しい方を中心にお見送りするお葬式の総称です。

家族のみではなく親しい友人も含め、少ない人数で行うお葬式も家族葬に分類されます。はっきりとした定義はないものの、参列する人数は1名~30名程度の場合が多いです。

家族葬のメリットは親しい間柄の人々のみで行うため、献体のお葬式でも理解してもらいやすい点です。参列者は故人さまの生前を深く知っており、献体になった理由や意図も汲んでもらいやすいでしょう。

大規模なお葬式だと受付や会計に人手が必要となったり、絶えず訪れる参列者に挨拶もしなければなりません。家族葬であれば参列者が少ない分、肉体的・精神的な負担が軽減されます。

負担が少なくなることで、故人さまとの時間をゆっくりと過ごせるでしょう。

また、家族葬は形式にとらわれない自由なお葬式にできます。故人さまの生前の趣味や特技を反映したお葬式にすることも可能です。

一方で、家族葬は故人さまの知人すべてに声をかけるわけではありません。そのため、参列者の選別に注意しなければなりません。

「自分は声をかけられなかった」と、後々のトラブルにつながらないようにも故人さま目線でよく考えて声をかける人を決める必要があります。

一日葬

一日葬とは、お通夜を行わずに葬儀・告別式とご火葬を1日で執り行うお葬式です。

献体の受け入れ前にお葬式を執り行う場合は、時間に限りがあるため、一日葬が選ばれるケースが多くあります。1日でお葬式を終えられるため、喪主やご遺族の負担が軽いのもメリットです。

なお、家族葬との違いはお通夜の有無と参列者です。

家族葬では2日にかけてお葬式を執り行いますが、一日葬ではお通夜を行いません。また、家族葬の参列者は故人さまと近い家族や知人に限られますが、一日葬は参列者を限定しません。

通常であればお通夜と葬儀・告別式の2回ほど参列するタイミングがありますが、一日葬では1回しかありません。一日葬だと葬儀・告別式が始まる時間は昼頃となり、仕事のある方はお葬式に参列できないケースもあります。

さらに一日葬は比較的新しいスタイルのお葬式であり、菩提寺の許可を得られないケースもあるため注意が必要です。その理由は、仏教においてはお通夜、葬儀・告別式、ご火葬の流れを重視するためです。

トラブル防止のためにも、一日葬を検討する場合は、献体のお葬式であることも含めて菩提寺に相談しておきましょう。

献体を行った場合の葬儀の費用について 

献体を行った場合の葬儀の費用について

献体を行った場合、お葬式の費用はどうなるのでしょうか。

ここでは、献体を行った場合のお葬式の費用を紹介します。

大学の費用負担に葬儀費用は含まれない

献体は無報酬・無条件が原則であり、大学の費用負担にお葬式費用は含まれません。

献体ではお葬式の費用も大学側がすべて負担してくれるとイメージされがちですが、お葬式関連の費用はご遺族が負担します。お葬式の費用負担を理由に献体を希望する場合は、十分に調べておきましょう。

一方、ご遺骨返還のタイミングで大学関係者による納骨式やご遺骨返還式などを行う大学もあります。毎年行われる慰霊祭も、医学の発展に献体された故人さまに敬意と感謝の気持ちを込めて行われるイベントです。

これらのイベントは基本的に費用負担がなく、お葬式や供養の代わりになると考えるご遺族も多くいます。

なお、ご遺体の引取から、ご遺骨の返還までの期間中に発生する必要な費用は大学の負担が基本です。返還先や引き取り先がないご遺骨は、大学の慰霊塔や納骨に合祀できる場合もあるため、この場合も費用はかかりません。

いずれにしても、「お葬式が安くなるから献体登録をする」という考えは誤りであるため注意しましょう。

火葬費・搬送費は大学負担

献体した場合に、大学の費用負担となるのは火葬費と搬送費です。

お別れ場所から、大学までのご遺体の運搬に要する費用はかかりません。ただし、出棺の際にご遺族側で手配した車で大学まで送る場合、搬送にかかる費用は自己負担となります。

火葬費は大学が負担するため、ご火葬にかかる費用を軽減できます。自身が亡くなったあとに、ご家族や親族の負担を少しでも減らしたいと考えている方にはメリットといえるでしょう。

一方、お葬式の費用や戒名料、納骨にかかる費用は自己負担となります。お葬式の形式によっては献体の手続きの手間が増えただけで、費用がほとんど変わらない場合もあります。

お葬式で香典を受け取った場合の対応

献体後にお葬式を執り行う際に、参列者から香典を渡された場合は受けとっても問題ありません。

献体を行ったあとのお葬式は簡略化されることも多く、「香典を辞退した方がいいのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、献体を行ったからといって香典やお葬式のマナーが変わるわけではありません。

こちらが辞退したいと伝えても、参列者によっては受け取って欲しいと考える方もいます。香典はお葬式の参列者の故人さまやご遺族に対する気持ちであるため、特に断る理由がなければ、ありがたく受け取ることもマナーといえるでしょう。

なお、香典を受け取った場合は、献体後のお葬式でも香典返しは必要となります。

まとめ

この記事では、献体の概要や登録条件、献体した場合のお葬式の内容を解説しました。

献体は医学の発展や人材育成のために欠かせない大切な制度です。しかしながら、誰でも希望すれば献体できるわけではなく、事前に登録しておく必要があります。

そして、献体を実行するかどうかは登録したご自身ではなく、ご遺族の選択にゆだねられます。家族の同意や協力も必要となるため、生前のうちに相談や確認をしておきましょう。

献体のお葬式は、お亡くなりになってから48時間以内が適していますが、基本的にはご遺族の意向が尊重されます。また、献体後にご遺骨が返還されるタイミングでお葬式を執り行うことも可能です。

献体のお葬式は、家族葬や一日葬が選ばれやすい特徴があります。

お葬式を検討している場合は、献体に理解があり、柔軟に対応してくれる葬儀社を選ぶことも大切です。

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お葬式で大切なことは後悔のないお別れです。

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監修者のコメント

献体を希望する人の遺族は、「献体するからこそ、区切りとして別れの場を設けて送り出したい」と通夜、葬儀・告別式等一連の行事をしっかり行いたいと希望するケースが多い印象があります。遺骨の引き取り手がどうしてもいない場合は、大学が用意する合葬という選択肢もありますが、基本的には自分たちでお墓を準備します。遺骨が戻って来るまでの間、ゆっくり準備しても良いでしょう。

献体に関するよくある質問

そもそも献体とは?
献体とは、医学や歯学の研究・発展のために遺体を無条件・無報酬で大学または関連団体に提供することです。提供後の遺体は、人体解剖実習などに役立てられています。
献体として遺体を提供した場合、遺骨はいつ返還されますか?
遺骨の返還は早くて1年~2年、長ければ3年以上かかってしまう場合があります。
献体の実施に遺族が用意するものはなんですか?
各登録先にもよりますが、主に死亡診断書の写し、印鑑、火葬許可書となります。
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