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陰膳の意味・マナー・注意点

陰膳の意味・マナー・注意点
  • 2024年11月29日

「陰膳(かげぜん)」と言う言葉を聞かれたことはありますでしょうか。
あまり聞き慣れない言葉かと思いますが、実は日本に昔からある慣習のうちの一つです。
こちらでは陰膳の意味や一般的な作法についてまとめていますので、陰膳への理解を深めて頂ければと思います。

作法に関しては、宗派やお寺さんによって細かく決められていることがありますので、陰膳を準備される前に、菩提寺の僧侶に確認されることをお勧めします。

記事の監修

人はなぜ弔い、弔われるのか、葬送儀礼を意味のある営みとして理解し、私たちは次世代へ伝えていきます。葬送儀礼マナー検定実施中。

陰膳とは?読み方や意味について

陰膳は「かげぜん」と読み、「影膳」とも書きます。
長期の旅行や離れて暮らしている家族のために、留守宅を守っている家族が不在者のために供える食膳のことを言います。
家族と離れている間に事故にあったり、ご飯を食べることができず飢えたりしないように願いを込めてお供えをする安全祈願としての意味を持っています。
現在は陰膳を供えるご家庭も少なくなってきましたが、戦時中にはどこのご家庭でも、戦地に出向いた家族のために陰膳を準備されていたようです。

また、既に他界してしまった身内の無事を願い準備する食膳のことも「陰膳」と言います。
亡くなられた実家のご両親のためにこっそりとお供えしたり、通夜や法事の席で故人用として準備をしたりします。

なお、浄土真宗で陰膳はお供えしませんので、気をつけましょう。

ここがポイント
 
 

陰膳は誰のために準備するの?
●遠くにいる家族のため
●大切な故人のため

陰膳のマナー

こちらでは、通夜や法事で準備をする陰膳のマナーについてご紹介します。
通夜や法事では、招待した方々が故人を偲んで、参列して下さいます。お見え下さった方々に対して失礼なことが無いよう、故人にお供えする陰膳についてもマナーを守ることは大切になってきます。
陰膳は、私たちと同じ食事を出すこともありますが、仏様は人間と同じ食事をすることはありません。
そのことを理解して出すことがとても大切です。

(陰膳を置く場所)
① 中央の上座に檀を設けます
② 檀に故人の写真、位牌を飾ります
③ 故人の写真、位牌の前に陰膳、お箸を置きます

(陰膳の並べ方)
陰膳の並べ方について、私たちの膳とは逆に置くと聞かれたことがある方もいらっしゃるかと思いますが
これはお膳を故人にお供えしたとき、私たち側から見た時の並び順となります。

こちらでは、陰膳を準備するときに私たちから見える並び順で説明していきます。
お供えする時には、お箸を故人から見て一番手前にくるように置きます。
なお、膳は必ず「膳引き」と呼ばれる台に乗せるようにしましょう。

① お箸:一番手前
② 飯膳:手前左側
③ 汁膳:手前右側
④ 坪(お新香):中央
⑤ 平椀(煮物):奥左側
⑥ 高坏(和え物):奥右側

陰膳の注意点

女性

では、通夜や法事などでお供えした陰膳は、いつまでお供えするのでしょうか。
また、お供えした陰膳は、家族で頂いても良いのでしょうか。
こちらでは、一般的なお供え期間とお供えした後の陰膳の取り扱いについて説明します。
宗派やお寺さんによっては、ルールとして決められていることがありますので、菩提寺がある方は、事前に確認されることをお勧めします。

陰膳のお供えはいつまで?
故人が無事に旅を続け、浄土にたどり着くことができるよう四十九日の間までという説もありますが、特に決まりはありません。
香や花、灯明と同じように、食事の一部を仏前にお供えしていただくという仏供を共食する光景は各地でみられます。
陰膳は家族で食べても良いの?
陰膳は、「お下がり」と言って、家族で頂きます。
もし、ご自宅以外で陰膳を準備された場合は、持ち帰って家族で頂きます。
陰膳を準備するということは、食べること自体が供養となります。
陰膳はお供えと同じ?
「陰膳」は死者に限らず、家から遠く離れて過ごしている生者に対して準備するお膳という意味で使われることもありますが、「お供え」は神仏か死者に対するものになります。
浄土真宗で陰膳は行わないのはなぜですか?
故人に対して陰膳を準備するのは、故人が仏様になるまでの四十九日間の旅でお腹が空かないようにと願ってのことです。
そのため、人は亡くなったらすぐに仏様になるという即身成仏(そくしんじょうぶつ)の考えを持っている浄土真宗の場合、仏様になるまでに旅をすることがありません。
言い換えると、極楽浄土までの旅の安全を願う必要がないため、陰膳も必要としていないのです。

まとめ

「陰膳」という言葉を聞くと、宗教色が強いと感じられる方も多くいらっしゃったかと思いますが、実は、宗教色というより、慣習に近いものとなります。
遠く離れたご家族のためや既に他界された方のために、今いらっしゃる場所での無事を願ってお供えします。
「陰膳」とは亡くなられた方のためだけの膳ではなく、生きている方の無事も願って準備する食膳なのです。

陰膳という慣習を忘れてしまったかもしれませんが、大切なご家族のために陰膳を準備されるきっかけとされてはいかがでしょうか。

監修者のコメント

共食という言葉があります。人は有史以来、顔を合わせ、ともに共鳴し合い、心の平穏をもたらす「共食」を大切にしてきました。共食は儀式に不可欠な要素ですが、先祖や故人へのお供えもそのひとつです。お供えで大切なことは、これらをおさがりとしていただくことで、それにより互いに心を通わせ、共鳴し合うことになると言われています。

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