浄土真宗ってどういう宗派?特徴や葬儀のマナーを紹介
- 2024年11月28日
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日本の葬儀は80%が仏式で行われていると言われていますが、仏教にもさまざまな宗派があります。
宗派毎に葬儀の作法やマナーが微妙に異なるため、いざという時に迷うことがないようポイントを押さえておきたいものです。
特に浄土真宗は、数ある仏教宗派の中で最も信仰者が多いため、参列先の葬儀が浄土真宗である可能性は少なくないでしょう。加えて、浄土真宗には他の宗派にない独特な作法やマナーがたくさんあります。
今回はそんな浄土真宗の基礎知識や特徴、葬儀でのマナーについて見てみましょう。
目次
浄土真宗にはどんな特徴がある?
浄土真宗は浄土教の一派であり、鎌倉仏教のうちのひとつです。ちなみに浄土教では、阿弥陀如来を信仰し、阿弥陀如来が作った極楽浄土への往生を目指し、浄土真宗のほかに、浄土宗や融通念仏宗などがあります。
浄土宗の開祖が法然、そしてその弟子の親鸞が、浄土真宗を開きました。
浄土真宗では、「私を信じるものは一人残らず救う」と誓った阿弥陀如来の慈悲は絶対であり、信心をもって「南無阿弥陀仏」の念仏を称えれば必ず極楽浄土に往生できると説いています。
また、浄土真宗の中でもさまざまな宗派に分かれており、代表的な10の宗派を「真宗十派」と呼びます。
この中でも特に大きな勢力を持つのが、西本願寺を本山とする「浄土真宗本願寺派」と、東本願寺を本山とする「真宗大谷派」です。両派は日本の仏教各派の中でも、最大規模の宗派で、本願寺派の門徒数は700万人、大谷派の門徒は550万人、浄土真宗全体では寺社数は18,000箇所以上にもなり、日本国内では最大の仏教勢力となっています。(※門徒とは、浄土真宗における檀家の意味)
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親鸞と「肉食妻帯」の関わり
日本では明治時代に出された太政官布告によって僧侶の肉食妻帯が公に認められる事となりますが、それよりもはるか昔から、浄土真宗では食肉妻帯を公然と行っていました。それは、開祖である親鸞自らが、庶民らと同じように肉を食べ、妻を持っていたからです。
当時の僧侶は肉や魚などの生臭ものを断ち、女性との交流を持たない事が正しい姿とされていました。
しかし、親鸞が修行僧が守るべき「戒」を打ち破ったのは、2つの理由があります。
ひとつは、浄土教の教えを身をもって証明するためです。浄土教の本尊である阿弥陀仏は、出家者でそうでないものも、万人を区別する事なく救済することを誓って仏になりました。親鸞の肉食妻帯は、まさに「万人を救う」という阿弥陀如来の誓願を証明するために行なったとも考えられます。
そしてもうひとつが、浄土真宗の教えを広めるためと言われています。当時の僧侶像を否定する様な振る舞いを行った親鸞は多くの人々から批判されましたが、それによってたくさんの人の注目を集めることにも成功します。
親鸞死後、その教えや生き様はたくさんの弟子によって受け継がれ、今では一大教団に発展するまでに至ります。
浄土真宗の3つの経典
浄土真宗で読まれるお経は3つに分かれており、これらは「浄土三部経」と呼ばれています。
仏説無量寿経(大経)
浄土三部経の中で最も大切なお経とされています。親鸞が「大無量寿経」と呼んでいたことから、略して「大経」とも呼ばれます。
この経典では、かつて法蔵菩薩という修行者だった阿弥陀如来が、すべての人々を救済するために長い時間をかけて熟慮を重ねて、48の誓願を立てて仏(如来)になったことが説かれています。そして、阿弥陀如来の光明と寿命が永遠であること、きらびやかな極楽浄土の光景が描写されています。
四十八願の中でとくに有名なのが、第十八願で、いまでも浄土真宗の信仰の根幹となっています。18番目の誓願とは、次のように訳せます。
経典の最後では、時代が下り、仏教が衰退しても、この教えだけは長く留めることで人々を救い続けると説いています。
仏説阿弥陀経(小経)
『仏説阿弥陀経』は極楽浄土のありさまや阿弥陀如来そのものについて書かれた経典です。『仏説無量寿経』を略して「大経」と呼ぶのに対して『仏説阿弥陀経』は「小経」と呼ばれます。
阿弥陀経の有名な1節に「これより西方、十万億の仏土を過ぎて世界有り、名けて極楽という」という一文があり、極楽浄土がどこにあるかを明らかにした重要な経典とされています。
また、阿弥陀経では宇宙の全方向にいる諸仏が、阿弥陀如来の本願に対して賛同していることが書かれています。阿弥陀仏の教えの尊さや偉大さ、重要さを説く上で鍵になる経典であると言えるでしょう。
仏説観無量寿経(観経)
『仏説観無量寿経』は略して「観経」と呼ばれる経典で、どんな罪人であっても「南無阿弥陀仏」の念仏を唱える事で極楽浄土に往生できる旨が説かれています。
この万人救済を説くにあたって、『観無量寿経』の序文には「王舎城の悲劇」というドラマが描かれています。
王舎城の悲劇とは韋提希(いだいけ)という女性が親との間で繰り広げた悲劇の話です。『観無量寿経』ではこの物語をハッピーエンドに展開させたものこそ、阿弥陀仏の本願であると説きました。韋提希は地球上ではじめて、阿弥陀仏の本願によって救われた人物とされています。
また、経典のタイトルに「観」の字が使われている通り、浄土を見るための16の観察法が説かれています。
浄土真宗の葬儀の特徴とは?
それでは、浄土真宗の葬儀の特徴について解説していきます。他の宗派とかなり考えが異なるために、丁寧にご紹介して参ります。
故人の供養ではなく阿弥陀仏への報恩感謝
浄土真宗の葬儀は他の宗派と異なり、「死者の供養」のためではなく、阿弥陀如来の恩に報い、感謝するための儀式として捉えられています(報恩感謝)。
なぜなら、浄土真宗の門徒は死を迎えると同時に阿弥陀如来によって極楽浄土へ導かれると考えられているからです。他の宗派のように、死後も手厚く供養して、成仏を願う必要がないのです。そのため、礼拝の対象が故人ではなく、ご本尊である阿弥陀如来となっていることもポイントです。
引導や授戒がない
他の仏教宗派では、葬儀で行われる「引導」と「授戒」をとても重要視します。「引導」とは死者をあちらの世界に送り出すこと、「授戒」とは故人を仏弟子にすることです。死後も仏さまの世界に進んで修行を積んで成仏を目指しているんだと信じることが、遺された家族たちの安心にもつながったのです。
しかし、前の章でも解説した通り、浄土真宗の教えの根幹は、阿弥陀如来のご誓願にあり、どんな人であっても、阿弥陀如来を信じ、念仏を称えるものは、一人残らずすぐに極楽浄土に往生できると説かれています。
この「絶対他力」「往生即身仏」という考え方が根幹にあるため、浄土真宗では引導や授戒を行いません。私たちがよく知る「戒名」とは、授戒の際に仏弟子として授けられた名前のことですが、授戒のない浄土真宗では戒名ではなく「法名」を授かります。
葬儀の流れ
浄土真宗で行われる葬儀の流れは以下の通りです。
▶臨終
故人はすぐに往生するので、末期の水などはしません。
▶納棺
湯灌で身体を清め、白衣を着せます。四十九日の旅がないため、旅支度も着せません。場合によっては僧侶が立ち合い、納棺勤行、そして念仏を称えます。
▶通夜・葬儀
通夜や葬儀は僧侶の読経と参列者の焼香を中心に進みます。『正信偈』『御文章』などを読み、念仏を称えます。
▶火葬
火葬場でも「火屋勤行」というお勤めをしてもらい、遺族は焼香を行います。
▶還骨勤行
お骨になった故人様に向けて再度勤行をし、念仏を称えます。
浄土真宗は、本願寺派や大谷派以外にもさまざまな宗派があり、それぞれ葬儀の儀式や流れが異なる場合もあります。
浄土真宗の焼香の方法は?
急な葬儀で迷ってしまうのが、お焼香の作法です。浄土真宗の焼香の特徴は以下の3点です。浄土真宗と分かっていれば、これらを押さえておきましょう。
- 額におしいただかない
- 本願寺派(西)の焼香回数は1回。
- 大谷派(東)の焼香回数は2回。
具体的な流れは以下の通りです。
①焼香卓の一歩手前で進み出て、遺族に一礼します。
②焼香卓へと進み、故人に一礼します。
③右手でお香をつまみ、香炉にくべます(本願寺派は1回、大谷派は2回)
④合掌して「南無阿弥陀仏」を唱えます
⑤焼香卓から少し後ろに離れた場所で1度立ち止まって、故人に一礼します
⑥遺族に一礼してから席に戻ります
h2 香典袋の表書きはどうすればいい?
お香典は、故人様へのお供えとして包まれるお金のことです。
浄土真宗であっても表書きは「御香典」としても何ら問題はありません。「香典」という言葉が「香のお供え物」を意味し、浄土真宗でもお香を焚くからです。
他にも「御仏前」という言葉も使えます。これは、浄土真宗では亡くなった人は等しく極楽浄土に往生し、仏になると考えられているからです。
逆に、「御霊前」は使わないとされています。ここでいう「霊」とは、仏になるまでの四十九日の間の存在のことを指しますが、浄土真宗では先ほどから述べているように、亡くなった人はすぐに成仏すると考えられ、「霊」という概念がないためです。
水引の色は双銀、黒白、黄白などが用いられますが、これは宗派の違いではなく地域性などによります。迷ったときは葬儀社などに相談してみましょう。
浄土真宗でやってはいけないこと
他の宗派と比べて独特な教えを持つ浄土真宗。だからこそ、やってはいけないこと、あるいは、すべきことでないことが多数存在します。他宗派に比べてタブーが多いとも言われますが、それなりの理由があってのことです。その意味をしっかりと把握して、浄土真宗への理解を深めましょう。
真宗の教義と関係のないものはタブー
浄土真宗は阿弥陀仏を唯一の信仰対象としており、他の宗教観が入り込むことを好まない傾向にあります。中国伝来の文化や日本土着の風習を仏教と混同しがちですが、以下のような振る舞いは仏教と一切関係が無いものなので注意しておきましょう。
葬儀におけるタブー
▶「戒名」ではなく「法名」
肉食妻帯を貫いた親鸞から始まる浄土真宗には、受戒(仏弟子として守るべき決まり事)がありません。仏弟子になった際に授けられる名前は戒名ではなく「法名」と言います。
▶枕飯、枕団子がない
枕飯や枕団子は、死後四十九日間の旅に携える食べ物として供えられます。浄土真宗では往生即成仏という考えから、死後の旅という考えがなく、そのため、枕飯や枕団子のお供えが不要です。
▶清め塩を用いない
浄土真宗では、死を穢れと考えず、極楽浄土への往生と捉えます。そのため、穢れを清めるための塩が不要です。
日々の信仰におけるタブー
▶般若心経を読む
浄土真宗の教えの根底には、阿弥陀如来の他力本願への信仰がありますが、般若心経は自力で成仏を目指すものです。
▶日毎の吉兆、占い、姓名判断など
これらの六曜や占術は基本的に中国の文化によります。また、日の吉兆に関わらず、阿弥陀如来を信じ、念仏の実践を推進します。
▶冥福を祈る
浄土真宗では、阿弥陀如来による救いが約束されているため、死後の幸せを祈る必要がありません。
▶位牌を使う
位牌を用いるのは元々中国における儒家の風習。加えて浄土真宗では先祖ではなく、本尊の阿弥陀如来のみを礼拝すればよいとしています。
▶仏壇に他宗の仏像や故人の写真を入れる
阿弥陀如来が唯一信仰対象なので、他宗派の仏さまや故人の写真は入れるべきでないとされています。
▶お盆の風習
お盆飾り・迎え火・送り火などは、中国の行事と仏教が融合して日本に伝来し、醸成されたものです。加えて、極楽往生したご先祖様はいつも私たちのそばで見守ってくれているという教えがあり(往相回向と還相回向)、お盆だからといって特別にご先祖様を迎え入れる必要がありません。
まとめ
今の時代においても、浄土真宗が仏教宗派の中でも最大勢力を誇るのにはそれなりの理由があります。
親鸞という己の哲学を探求しつくした生きざまと、死と同時に極楽浄土へ導いてもらえるという分かりやすい教えは、鎌倉時代の動乱を生きる人々だけでなく、現代の私たちにとっても力強い支えとなってくれます。
浄土真宗はその特徴的な教えから、他の仏教宗派とは異なる考え方やマナーが多くあります。浄土真宗について事前に正しい知識を身につけておくことで、心を込めて、故人に、そして阿弥陀如来に向き合うことができることでしょう。作法が不安な場合は菩提寺や葬儀社に相談しておくと安心です。
浄土真宗に関するよくある質問
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監修者のコメント
岩田 昌幸 一般社団法人 葬送儀礼マナー普及協会
浄土真宗では位牌を必要とせず、線香も立てずに寝かせて焚いたり、焼香は額にいただかないなどの作法があります。門徒の方でも「詳しい作法はよくわからない」という声も少なくありません。決まり事が多くて厳しいようにもとれますが、ほとんどは「〇〇してはいけない」ではなく、「〇〇する必要がない」という解釈になります。旅立ちの白装束は必要ありませんが付けることを否定しているわけではないですし、御霊を入れるわけではありませんがシンボルとして位牌が欲しいという場合は作ることを否定しないという考えです。