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時宗は、浄土教の一門として知られています。
時宗の歴史は古く、鎌倉仏教の1つとして中世から受け継がれてきました。室町時代には信者の数も増え、観阿弥などの文化人も時宗の法名を持つようになります。
幕府や大名から保護を受けた時期もあり、他の宗派同様に今日まで信仰されてきた仏教の1つです。
今回は、この時宗について解説していきます。今後のためにも、時宗が宗派としてどのような特徴を持つのかをぜひ知っておきましょう。
時宗は、鎌倉時代の僧である一遍上人が開祖です。
四国の豪族の家に生まれた一遍上人は、10代で出家し天台宗の寺で修業を始めます。
その後、長野の善光寺や大阪の四天王寺などの全国の寺で修業を積み、弟子たちとともに各地を巡って布教活動を行います。
1日6回決まった時間に念仏を唱える一遍上人や弟子たちの集団は、当時の人々から「六時念仏衆」や「時衆」と呼ばれていました。
「時衆」が「時宗」へと変化したのが、宗派の名称の由来と言われています。
時宗の総本山は、神奈川県藤沢市の清浄光寺です。
一帯を治めていた俣野氏が開いたこちらの寺を、時宗を信仰していた遊行上人が後に道場として再興します。
その後、江戸時代に清浄光寺は時宗の寺の総本山になりました。
時宗では、念仏を唱えることで浄土往生が約束されると考えます。
浄土教の1つである時宗では阿弥陀仏を本尊にしており、念仏でも「南無阿弥陀仏」を唱えるのが特徴です。
時宗は他の仏教の宗派に比べるとマイナーな印象がありますが、全国にある寺の方は決して少なくありません。
実際、時宗の教区は全国に設けられており、400以上の寺院があります。
時宗は、他の宗派には見られない方法で全国で布教活動を行ってきました。
時宗の代表的な布教活動について、ここではご紹介してみましょう。
開祖である一遍上人は、遊行をしているときに「ご賦算(ごふさん)」という活動を行いました。ご賦算は、念仏札を配る布教活動です。
南無阿弥陀仏をひたすら唱えることで極楽浄土へ行ける、という教えを広めるために、このような念仏札を配る活動が行われました。
ちなみに、このご賦算は、現代でも神奈川県藤沢市の清浄光寺で定期的に実施されています。
一遍上人がご賦算の際に配った念仏札には、「南無阿弥陀仏決定往生六十万人」という文字が書かれていたといわれています。
この文字の解釈にはいろいろな説がありますが、いずれの説でも「阿弥陀仏の徳によって、すべての人が往生して安楽の世界に行ける」というのが大まかな意味と解釈されています。
「南無阿弥陀仏を一心に唱えることで救済される」と時宗では考えます。
したがって、当初はご賦算の際にも「信仰を持つこと」や「南無阿弥陀仏を唱えること」などを1つの条件にして、念仏札を配る傾向がありました。
しかしながら、夢によって熊野権現のお告げを受けてからは、念仏札が分け隔てなく配られるようになったのです。
時宗の大きな特徴に挙げられるのが、踊念仏という儀式を行う点です。
踊念仏は、時宗ならではの特徴としてぜひチェックしておきたいところです。
踊念仏は、鉢や太鼓といった楽器を打ち鳴らしながら踊り、「南無阿弥陀仏」などの念仏を唱える儀式です。
時宗の踊念仏の儀式は、僧侶はもちろんですが、檀家の信徒も行うのが1つの特徴です。
長野県佐久市ではこの踊念仏の実演が行われており、重要無形民俗文化財に指定されています。
踊念仏は、現代の盆踊りの元になったといわれています。
夏になると全国で開催される盆踊りは、踊りながら先祖や亡くなった人を供養する儀式です。
踊念仏の念仏踊りが死者を弔うお盆の行事と結びついたのが、盆踊りの始まりという説があります。
また、踊念仏は歌舞伎踊りにも影響を与えたといわれ、民俗学の分野でも注目されています。
踊念仏を行っていたのは、実のところ時宗だけではありません。
九州で活躍した浄土宗の僧、一向もかつてはこの踊念仏を行っていました。
現代でも、一向派の浄土宗のお寺の中には踊念仏の活動を行っているところが見られます。
時宗の場合、葬儀がないわけではありませんが、本来の時宗のスタイルで葬儀を行うケースはまれです。
時宗のお寺は全国に点在していますので、檀家もあります。
こういった檀家がお葬式をする際には、浄土宗の形式と似たスタイルが用いられるケースが多いです。ちなみに、浄土宗の葬儀で行われるのが次のような儀式です。
下炬引導は、僧侶が故人に引導を渡す儀式です。
この下炬引導は故人が浄土に行くために必要な儀式であり、葬儀のプロセスの中でもとくに重きが置かれています。
下炬引導の際には、僧侶が法具を松明に見立てて火葬の点火を行うそぶりをし、下炬の偈(あこのげ)と呼ばれる文を読み上げます。
念仏一会は、僧侶と参列者が一緒に「南無阿弥陀仏」を繰り返して唱える儀式です。
こういった念仏を僧侶と参列者が唱える儀式は、伝統的な時宗の葬儀でも行われます。
時宗では、踊念仏が供養の方法になっています。
ただ、伝統的な時宗のスタイルで行われる葬儀でも、踊念仏の儀式が取り入れられることはまずありません。
時宗のお寺ではお葬式を随時受け付けていますが、葬儀は施主の希望にそったスタイルで行われることが多いため、時宗の伝統的なお葬式に遭遇するケースは少ないと言えます。
時宗の葬儀で行われる焼香は、他の仏教の宗派と余り変わりません。
焼香の仕方に迷ったときには、一般的なスタイルで動作をするようにすれば大きな間違いをおかすことはないでしょう。
時宗や浄土宗の焼香は、回数が明確に決まっていないという特徴があります。
一般的な焼香の回数である1回から3回を目安に行えば、マナー違反になることはありませんので、他の参列者のやり方や時間などを考慮して適宜調整しましょう。
焼香をする際には、僧侶や遺族に一礼をして焼香台まで進みます。
正面に置かれている遺影に向かって一礼、合掌をして焼香を行う点は、他の宗派のやり方と同じです。
中指と人差し指、親指でお香をつまみ、額に押し頂くのが時宗の焼香のスタイルです。
浄土真宗のように、つまんだお香をそのまま香炉にくべるのが正式とされる宗派もありますが、時宗や浄土宗の場合はお香を額に押し頂いてから焼香を行います。
時宗の葬儀では、浄土宗と同じ形の数珠が用いられます。
時宗や浄土宗で使う数珠には特徴がありますので、購入をするときには宗派に合った品を選びたいところです。
時宗や浄土宗の数珠は、2つの輪が交差する2連の形をしているのが特徴です。
ちなみに、数珠の先端には2つの房がついています。他の宗派で用いられる正式な数珠は、108個の珠が連なっています。時宗や浄土宗の数珠も、主玉や親玉、弟子玉などがある点は一般的な数珠と同じですが、珠の総数は他の宗派とは異なっています。
男性用と女性用の品がそれぞれあるのが、時宗や浄土宗の数珠です。
男性用は三万浄土、女性用は六万浄土と呼ばれており、珠の数にも違いがあります。念仏を唱えやすいような数になっているのが、時宗や浄土宗の数珠です。
時宗では、「数珠」という呼び名は使いません。念仏の際に使用する数珠は、「念珠」と呼ぶのが一般的です。
時宗は、合掌の仕方に少し特徴があります。
仏教の儀式で行われている合掌にはさまざまなスタイルがありますが、時宗の場合は未敷蓮華合掌(みぶれんげがっしょう)と呼ばれるスタイルで合掌を行うことが多いです。
合掌は焼香の際にも必要になる動作ですので、ぜひ正式なスタイルを覚えておきましょう。
未敷蓮華合掌をするときにも、まずは通常の合掌と同様に手のひらを合わせます。このときに中央の部分を少し膨らませるのが、未敷蓮華合掌のスタイルです。手のひらの中央を膨らませることで、蓮華のつぼみのような形が出来上がります。
肩や手に余計な力が入っていると、この未敷蓮華合掌をするのは少し難しいでしょう。つぼみのようなふっくらとした形に手のひらを整えるためには、指先まで力を抜いておくのがポイントです。肩や手をリラックスさせて静かに手を合わせれば、蓮華のつぼみのような形になるでしょう。
僧侶や参列者が行う合掌は、一見どれも同じに見えるかもしれません。しかしながら、このような合掌にはいろいろなスタイルがあります。例えば、真言宗や天台宗などの密教には12種類の合掌のスタイルがあり、未敷蓮華合掌もその1つに含まれています。
葬儀の際には、宗派のしきたりにそって戒名がつけられます。ちなみに、時宗ではこのような戒名は法名と呼ばれています。時宗の法名は、男性と女性で少し異なるのが特徴です。
時宗では、男性の法名に「阿弥陀仏」が多く用いられてきました。現代では、この「阿弥陀仏」を略して「阿」の号が法名の1文字に使われるケースが多いです。
女性の法名の場合は、「一」や「仏」の字が入るのが特徴と言えます。時宗の開祖であった一遍上人が、女性の法名に「一房」や「仏房」を用いたことから、「一」や「仏」という字が使われるようになりました。このような文字は、「一仏乗」から取ったと言われています。また、「弌」の号も女性の法名にはよく使われます。
他の宗派の戒名に見られる院号や位号は、時宗の法名でも用いられます。生前に何らかの功績を残した方の法名に、院号がつくケースがある点は時宗も他の宗派と同じです。また、「信士」や「居士」などの位号が最後の部分につきますので、時宗の法名も一見他の宗派と変わりません。「阿」や「一」、「仏」などの文字が使われているかどうかが、時宗の法名を見分けるときの1つのポイントになるでしょう。
実のところ、伝統的な時宗のスタイルで葬儀が行われることはほとんどありませんが、地方によっては今なお本来のスタイルで葬儀を行うケースもあります。時宗の葬儀は非常に少なくなっているとは言え、ゼロではありません。 ご紹介したように、時宗の葬儀の場合は次のような点に特徴があります。
合掌は未敷蓮華合掌という独特のスタイルで行われますが、普段と同じようなお参りのスタイルで大丈夫です。 合掌の仕方は宗派によって変わるケースも見られますので、基本的には自分が属する菩提寺の宗派の作法に沿った形で合掌しましょう。
数珠も普段使っているものを持参します。各宗旨・宗派の本式数珠は、それぞれ形も持ち方も違いますので、すべての宗派に合わせることは不可能です。 各宗旨・宗派に使用できる略式の片手念珠を持参しましょう。
宗旨宗派ごとに焼香や合掌の仕方、作法など少しずつ異なりますが、実際にすべての作法を把握して参列できる人はいませんし、事前に把握しておくことも困難です。 大切なのは、その場にふさわしいふるまいをすることで、弔意の気持ちを表すことではないでしょうか。
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