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法事法要での献杯の作法

  • 2024年12月03日
提灯

「献杯(けんぱい)」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、実際に献杯がどういうものか良く分からないという方も多いのではないでしょうか。地域によっては、「こんぱい」とも言います。
こちらでは、法事や法要で行われる献杯がどのようなものかということから、献杯のマナーや流れから挨拶や注意点についてご紹介します。

記事の監修

人はなぜ弔い、弔われるのか、葬送儀礼を意味のある営みとして理解し、私たちは次世代へ伝えていきます。葬送儀礼マナー検定実施中。

献杯について

献杯とは、相手に敬意を評して杯を差し出すことを言いますが、「故人を悼んで杯を捧げる」という意味もあり、葬儀を始め、法事や法要の席で杯を捧げることを「献杯」と言います。
お酒の席で杯を交わすときに使われる「乾杯」という言葉がありますが、葬儀や法事、法要の場では、「乾杯」という言葉は使わず、「献杯」と言うのが一般的です。
では、乾杯と献杯は何が違うのでしょうか。その違いについて説明していきましょう。

乾杯と献杯の違い

まずは、「乾杯」と「献杯」の違いについて説明していきます。
一般的によく言う「乾杯」とは、結婚式やお祝い事、会社での飲み会など、喜ばしい席で行われる杯を交わすことを指します。
対して、「献杯」は葬儀(葬式)や法事・法要など弔辞の席で杯を交わすことを言います。
言葉は良く似ていますが、由来は大きく違い、慶事の席(お祝い事)で使われている「乾杯」は西洋から来ていますが、弔辞の席で使われる「献杯」は、儀式の一つに近いものとなります。
では、実際に「乾杯」と「献杯」がどのような場面で使い分けられるのか、もう少し詳しくご紹介していきましょう。

乾杯について

乾杯は、主に慶事(お祝い事)の席で開席(宴の開始)の合図として、会食(食事)を始める前に杯を交わすことを言います。
結婚式や会社の飲み会、記念パーティーや家族間でのお祝い事などに使われており、お酒の入ったグラスを持ち、「乾杯」と言う発生と共にグラス同士を合わせてカチンと音を出して喜びを分かち合います。
乾杯の席で用いられるお酒は、ビールやワイン、日本酒、シャンパンと種類も様々です。
また、乾杯の席では、お酒が苦手な場合はウーロン茶やジュースなどアルコール成分の入っていない飲み物で乾杯することも失礼には当たりません。

献杯について

葬儀や法事・法要の席において、故人に敬意を表し、死を悼み、供養する気持ちを持って杯を交わすことを献杯と言います。
葬儀や法事・法要が終わり、お斎(おとき=食事の席のこと)の開始の前に献杯を行います。
発声は、喪主や施主、遺族代表、依頼を受けた人が行い、乾杯のように大きく明るい声で発声するのとは違い、献杯は控えめな声で発声をします。
ちなみに、喪主と施主は兼任されることが多いため、同じ役目を担うと思われがちですが、それぞれ異なる役目を担っています。
喪主は、遺族代表として、葬儀や法事・法要の打ち合わせを行ったり、挨拶を行ったりします。それに対して、施主(せしゅ)は、葬儀や法事・法要にかかる費用を負担し、喪主の補助的役目を担います。
では、これから献杯のマナーや流れ、挨拶に関してご紹介していきます。

献杯でのマナーについて

献杯は、故人を悼み、捧げるものですので、乾杯の時のマナーとは大きく異なります。
マナーを心得ていることで、ご家族・ご親族の方や他の参列者(列席者)の方々を不愉快にすることがありませんので、ぜひ、参考にしてください。

●献杯が終わるまでお斎(食事)に手をつけないようにしましょう
●献杯の発声の後、唱和と合掌もしくは黙祷を行いますので、発声直後に飲まないように気をつけましょう
●「献杯」の杯を持ち上げる際は、顔あたりまでの高さを目安に軽く持ち上げるようにしましょう
●献杯の飲み物は、故人への思いを込めて、少しでも口をつけるようにしましょう
●「献杯」の杯は飲み干さなくてもマナー違反にはなりません

挨拶をお願いされたとき

献杯の挨拶をお願いされたときは、特別な事情がない限り、快くお引き受けすることをお勧めします。
事前にお願いされることがほとんどですが、当日、急にお願いしされることもあります。
急にお願いされた場合でも、慌てず、お引き受けできるように挨拶のポイントを押さえておくと良いでしょう。

法要・法事での献杯の流れ

一般的な献杯の流れは、以下の通りとなります。宗教や宗派により異なりますので、事前に葬儀社や僧侶に確認することをお勧めします。

STEP 1故人のお位牌にお酒を捧げる
故人のお位牌にお酒を捧げた後、参列者(列席者)全員の杯にお酒を注ぎます。
 
STEP 2遺族代表が挨拶および献杯の言葉をお願いした人の紹介
遺族の代表が、参列のお礼とお斎(食事)の始まりとして、一言挨拶をし、併せて献杯をお願いした人の紹介を一言でします。

 

(例文)
本日はお忙しい中、○○の一周忌にお越し頂きありがとうございます。おかげさまで、一周忌も滞りなく、無事に済ませることができました。
これより、皆様と○○を偲びつつ、和やかな一時を過ごしたいと思います。
まずは、故人の友人である△△様に一言お願いいたします。

※献杯の言葉は事前にお願いしておきます。お願いする方は、一般的に、遺族代表や生前に故人と親しかった友人にお願いします。

 
STEP 3献杯の発声
献杯の発声は、「献杯の言葉」の後に続いて、落ち着いた声で静かに「献杯」と言い、軽く杯をあげます。
 
STEP 4唱和
代表者による「献杯」の発声の後に続いて、同じく落ち着いた声で静かに「献杯」と言い、軽く杯をあげます。
ここで気をつけることは、唱和は必ずお位牌に向かって行うということです。
故人に対して敬意を表して行いましょう。
※唱和(しょうわ)とは、まず一人が先行して唱えた言葉に続いて、その他の参加者が同じ言葉を唱えることを言います。
 
STEP 5合掌
献杯の発声に続き、合掌を行います。
宗教・宗派によって、黙祷を行います。
 
STEP 6お斎(食事)の開始
喪主もしくは施主からお斎(食事)の始まりの言葉を発します。
始まりの言葉が発せられたら、食事を始めます。
食事では故人との思いで話しなどを語り、静かに頂くようにしましょう。

 

 (例文)
○○様ありがとうございました。
それでは、どうぞ食事をお召し上がりください。
 
STEP 7お斎のお開き
お開きの時間が来たら、喪主もしくは施主が会のお開きを告げます。

 

 (例文)
皆さま、本日はお忙しい中を最後までおつき合い下さり、ありがとうございました。
つかの間でございましたが、これにてお開きとさせて頂きたいと存じます。 どうかこれからもよろしくお願い申し上げます。
本日はまことにありがとうございました。

献杯での挨拶文例

献杯での挨拶は、喪主、施主もしくは事前にお願いされた方が行います。その際の挨拶では以下の5項目を意識して挨拶すると良いです。
①故人との関係と自己紹介
②集まってくださった方々へのお礼の言葉 ※喪主もしくは親族の場合
③無事に法事・法要を終えることができたことへの感謝の言葉 ※喪主もしくは親族の場合
④故人を偲ぶ言葉もしくは故人との思い出やエピソードの言葉
⑤献杯の発声

ここがポイント
 
 
●献杯はお斎開始の合図となりますので、長くなりすぎないよう1〜2分位にまとめる
●喪主、施主の場合は、参列してくださった方への労いの言葉を入れる
●喪主、施主でない場合は、故人を偲ぶ言葉やお悔やみの言葉を入れる
●喪主、施主でない場合は、挨拶の冒頭に故人との関係を入れる
●忌み言葉(いみことば)を使わないようにする

※忌み言葉とは「重ねがさね」「くれぐれも」などの重ね言葉などを指します

喪主もしくは施主の挨拶例文

本日はお忙しい中、父◯◯の四十九日の法要にご参列くださいまして、ありがとうございます。おかげさまで、滞りなく済ませることができ、故人も喜んでいることと思います。今日は久しぶりに故人との思い出を語りながら、和やかな時間を過ごしていただければと思います。今後とも、変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。献杯。

親族の挨拶例文

故人の長男◯◯でございます。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。 おかげ様で無事に一周忌の法要を終えることができました。久しぶりに皆様にお会いできて、故人も喜んでいることと思います。ささやかではありますが、お料理をご用意させて頂きましたので、故人との懐かしい思い出話でもお伺いできればと思っております。 それでは、献杯のご唱和お願いいたします。献杯。

友人の挨拶例文

故人の学生時代からの友人の◯◯と申します。 ご指名を賜りまして、献杯の挨拶をさせていただきます。月日が流れるのは早いもので、△△君が亡くなって1年が経ちました。今でも、目を閉じると彼の元気な姿が思い起こされます。 彼のことですから、きっと我々のことを見守ってくれていることでしょう。 今日は△△君の思い出話しをできればと思っております。それでは、献杯させていただきます。献杯。

献杯の注意点

こちらでは、献杯を行う際の注意点に関してご紹介します。
注意点はマナーとは異なり、言動として控えることこととなります。献杯は、厳かな雰囲気の中で執り行われます。乾杯で良しとされていることの多くがNGとなりますので、事前にこちらで注意点を確認しておきましょう。

●「献杯」の発声は、乾杯と違い大きな声を出さないよう、落ち着いた、控えめの声で発声しましょう
●杯を上げる際、真上ではなく、顔の位置を目安に軽くであげます
●献杯では、周囲の方と杯同士を合わせて音を出すことはしないようにしましょう
●献杯の発声後、拍手はしないようにしましょう
●杯を飲み干した直後、周囲の方との談笑は控えましょう
●献杯にお代わりはありませんので、お代わりは控えましょう
●献杯は全員が揃って始まりますので、遅刻をしないようにしましょう

監修者のコメント

神仏や御霊へのお供えすることを献杯といい、古くから使われていたようです。とはいえ、葬儀や法事のお斎のシーンで「献杯」というようになったのは、地域によっても異なりますが全国的に広まったのは戦後になってからだとか。

献杯に関するQ&A

Q1.献杯は必ずするものですか
A1.地域や宗派によって異なりますので、事前に葬儀社やお坊様(僧侶)に確認しましょう

Q2.献杯の挨拶は喪主、施主もしくは遺族がするものですか
A2.特に決まりはありませんが、故人の親戚である兄弟姉妹(叔父、叔母)、義兄や親しくしていた友人、会社関係の方にお願いすることが一般的です。

Q3.献杯をお願いする時にはどのようにしてお願いしたら良いですか
A3.法事・法要の日時をお知らせしつつ、「献杯をお願いできますか」とお声かけしましょう。お願いする時は、ハガキでのお知らせとともに電話で直接お願いすることをお勧めします。

Q4.献杯は男性が行うものですか
A4.決まりはありませんので、母親や姉妹、女性の友人が行っても問題ありません。しかし、日本に昔からある家督制度のしきたりから男性が行うものとされている場合もありますので、女性の方にお願い際は事前に親族間やお坊様に確認をしておくことをお勧めします。

Q5.献杯での飲み物は何を準備したら良いでしょうか
A5.日本酒が一般的ですが、車でお見えの方、アルコールが苦手な方、お子様のことを考慮し、ジュースやお茶などノンアルコールの飲み物

Q6.献杯の挨拶はいつ頃お願いしたら良いですか
A6.法事・法要の日時が決まったらお願いしましょう。

Q7.献杯の杯は全て飲み干さなくてはいけないものですか
A7.全て飲み干す必要はありませんが、故人に敬意を表するものが献杯となりますので、少しでも口にするようにしましょう

Q8.献杯では、必ずお酒を飲まなくてはいけませんか
A8.前もってソフトドリンクを希望されると良いでしょう。アルコールが苦手な方や車での来場の場合は、遠慮なく申し出ることをお勧めします

最後に

葬儀や法事・法要の食事の前に行う献杯は、故人を偲び、敬うための大切な儀式となります。ご紹介したマナーやポイント、例文が絶対ではありませんが、ご遺族や他の参列者(列席者)の方々に失礼のないよう心がけましょう。
なお、献杯の流れやマナー、ルールに関しては、地域や宗教・宗派によって異なりますので、必ず事前に葬儀社の方やお坊様(僧侶)、親族の方に相談をしましょう。

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