キリスト教式の葬儀とは?カトリック、プロテスタントの違い
- 2023年02月08日
お葬式手配の「よりそうお葬式」
同じキリスト教の葬儀でも、教派により異なります。大きな違いはその「死に対する考え方」にあります。
また、所属する教会により若干作法も異なるので、気がかりな点や心配な点があれば、葬儀社の担当者や神父、牧師に直接相談しながら進めることが大切です。
ここでは大きな教派であるカトリックとプロテスタントの葬儀を中心に、一般的な流れをご紹介します。
キリスト教葬儀とは
葬儀・お葬式のことを、キリスト教では「葬儀式」といいます。
キリスト教にはもともとお通夜の習慣はありませんが、日本独自の風習を取り入れ、プロテスタントでは「前夜祭」、カトリックでは「通夜の祈り」という式を行います。
ただし、仏式のように食事やお酒を振る舞う習慣はありません。
葬儀はおもに神父、牧師が教会で行いますが、自宅や葬儀場、斎場で行われる場合もあります。
キリスト教ではお焼香はあげず、代わりに一輪の献花を手向けるのが一般的です。
カトリックでは、聖職者を「司祭」「神父」、礼拝で歌われる歌を「聖歌」といいます。
プロテスタント
プロテスタントの教会式の葬儀は、故人は神のもとで安らかになるという考えがあるため、神に捧げる祈りが中心となります。
神に感謝し、遺族を慰めることに重きをおいて式が進みます。
聖書の朗読、讃美歌斉唱、牧師の説教を行い、葬儀と告別式は分けずに行われます。
プロテスタントの葬儀は、形式にこだわらないのが特徴です。
カトリック
カトリックの教会式の葬儀は、神に故人の罪を詫びて許しを請い、永遠の命を得られるように祈ります。
聖書朗読や神父による説教を行う「言葉の典礼」と、パンやぶどう酒などを祭壇に奉納するミサが中心となります。
聖歌に送られて、献花なども行われます。
※カトリックはカソリックとも呼ばれています。その違いは、Catholicの「th」を英語では「s」と読むため、英語読みではカソリック、ラテン語読みではカトリック(カトリカ)と呼ばれていることから来ています。
キリスト教葬儀の流れ
キリスト教の教会式の葬儀は、プロテスタント、カトリックともに聖書の朗読と祈りを中心に行われますが、葬儀と告別式を分けて行うカトリックに対して、プロテスタントの場合は葬儀と告別式を同時に行います。
順を追って紹介します。
危篤・臨終
キリスト教では、信者の容態が危篤状態になった段階で牧師、神父に来てもらいます。
プロテスタントの場合
信者が安らかに天へ召されることを牧師と家族が一緒に祈る「聖餐式(せいさんしき)」を行います。
牧師はパンとぶどう酒を信者の口に与えます。
そのあと、聖書の一説を読みながら、神に「天に安らかに召されるように」と、「永遠の安息」を家族とともに祈ります。
信者が臨終を迎えたら、遺族はガーゼや脱脂綿に水を含ませ故人の唇を濡らす「死に水(末期の水)」をとる儀式を行い、その後遺体を清め「死に化粧」を行い、生前に愛用していた服などに着替えさせて旅立ちの準備をします。
カトリックの場合
神父は信者の意識がまだあるうちに「病者の塗油の秘跡(聖油の秘蹟)」を行います。
病人を救う儀式です。
信者の枕元に白い布で覆った小机を用意します。
その上にロウソク、間に十字架、その前に、タオル・綿・聖体(※)・聖油壺などを置きます。
※聖体…教会から持参したパンとぶどう酒のこと
神父は死に瀕している信者の額に手を置き、神に犯した罪の赦しを請い、聖書を朗読して、信者の額と両掌に聖油を塗ります。
聖油を塗られた者は全ての罪が許され、神の恵みが得られるとされています。
逝去・遺体搬送・安置
プロテスタントの場合
故人の手を祈りの形に組み胸の上に置き、遺体の上に聖書を置きます。
カトリックの場合
聖油の秘蹟の後の逝去前あるいは逝去直後に「聖体拝領」を行います。
神父が祈りを捧げながら、信者に「聖体」であるパンとぶどう酒を与える儀式です。
プロテスタントもカトリックも、病院で亡くなった場合は速やかに院外に搬送する必要がありますので、いったん自宅で安置し納棺から通夜祭までを営むのが一般的です。
納棺式
プロテスタントの場合
納棺は牧師立ち会いのもと行われます。
祈りを捧げたあと、遺族の手で遺体を棺に納めます。
納棺された遺体に白いガウンをかけ、遺体の周りを白い花で包みます。
黒い布で棺を覆い、その上に白い花で作った十字架を飾ります。
聖書の朗読や祈りを捧げたあと、牧師が納棺の辞を述べて賛美歌の斉唱をします。
最後に再び祈りを捧げます。
カトリックの場合
臨終後に遺体を清め、着替えを済ませ「死に化粧」をします。
納棺は通夜前に行うのが一般的で、神父立ち会いのもと行われます。
故人の手を胸の上で組ませ、愛用していた十字架やロザリオを持たせます。
神父の唱導で祈った後、聖書朗読、聖歌斉唱し、故人の安息を祈って聖水を遺体に撒きます。
その後、遺族で納棺し白い花で遺体の周りを埋め尽くし、お棺には黒い布をかけ安置します。
通夜の集い/前夜祭
仏式の通夜にあたります。一般には納棺式に引き続き行われる前夜祭には牧師・神父をお招きして讃美歌・聖歌の斉唱と聖書朗読が行われ、祈りを捧げます。
牧師・神父による死についての説教や、参列者を茶菓子などでもてなす茶話会が行われる場合もあります。
カトリックには通夜の習慣はありませんが、最近はプロテスタントの「前夜祭」に準じて行われる場合もあります。
葬儀、告別式
祈りは神のために捧げられるもので、故人への冥福を祈るのではなく、あくまで神への感謝と遺族を慰めるために行われます。
献花は仏教の焼香にあたるもので、喪主から始まり、遺族、親族、最後に参列者が献花を行います。
カトリックの場合
「入堂式」「ミサ聖祭式」「赦祈式(しゃとうしき)」という3つの儀式があり、故人が洗礼を受けたカトリック信者でない場合はミサ聖祭式は省略されます。
故人を神に委ね、キリストの再臨と死者の復活を祈ります。
カトリックの正式な儀式には「告別式」はありませんが、日本では行われる場合が多いです。(ただし、カトリックの正式な儀式である入堂式・ミサ聖祭式・赦祈式以外は認めない教会もあります。)
出棺式
賛美歌・聖歌の斉唱と聖書の朗読、出棺の祈りを捧げ、棺の中に献花を行い、棺のふたを閉めます。棺は遺族が霊柩車まで運びます。
火葬、埋葬
キリスト教では「土葬」を基本としています。
しかし、日本ではほとんどの自治体で土葬を禁じています。そのため、日本での埋葬は火葬が一般的です。
火葬場では「火葬前式」を行います。
牧師・神父が聖書を朗読し、家族とともに祈りを捧げ、讃美歌・聖歌を斉唱して、故人に別れを告げた後火葬を行います。
火葬後には仏式と同じようにお骨上げを行い、喪主が骨壷を持ち帰ります。
追悼の儀式
プロテスタントの場合
1週間目か10日目、または1ヶ月目の「召天(しょうてん)記念日」に自宅または教会にて記念集会を行います。
牧師、親族、知人を招き祈りを捧げます。
礼拝が終われば、追悼のために茶話会を開きます。
その後、1年目、3年目、5年目、7年目の召天記念日に教会で追悼のための記念集会が行われます。
カトリックの場合
葬儀後に「追悼ミサ」を、故人の死後3日目、7日目、30日目に教会で親族、知人、友人を招いて行います。
カトリックでは毎年11月2日を「死者の日」と定めており、教会で死者のための特別ミサが行われます。
この日は墓地にお参りして墓前に献花します。
ミサは以下のように進行されます。
- 1.開祭の儀
- 2.言葉の典礼
- 3.感謝の典礼
- 4.交わりの儀
- 5.閉祭の儀
キリスト教の葬儀と仏教の葬儀の違い
葬儀における仏教とキリスト教の大きな違いは、死に対する考え方です。
仏教(日本で主流である大乗仏教)では「死」を不浄なもの、縁起が悪いものとして捉えますが、キリスト教では「死」は祝福されるべきものとして捉えます。
死に対する考え方が違うと、遺族に対してかける言葉も自ずと変わってきますので注意しましょう。
準備
仏式の場合
不祝儀の呼び方もいろいろあり、四十九日法要前は「ご香典」「御霊前」、四十九日以降の場合は、故人が仏様になられるということから「御仏前」と呼びます。
不祝儀の袋に入れる香典料には新札は使用しないのがマナーです。
キリスト教の場合
不祝儀袋は百合の花や十字架がデザインされたキリスト教専用のものを使用します。
ない場合は、白無地の封筒を代わりに使用しても構いません。
一般に「御花料」はプロテスタント・カトリック、どちらにも使用できる書き方です。
余談ですが、神式葬儀では、「玉串料」といいます。
式中
仏式では臨終の儀式はありませんが、キリスト教では臨終の時点から神父や牧師による「看取り」の儀式が始まります。
危篤の時点で牧師・神父に来ていただきます。
キリスト教の葬儀でのマナー
服装は、仏式や神式と同様に、男性なら黒のスーツに白いシャツ、女性なら黒のアンサンブルやワンピースなど、黒の喪服が一般的です。
参列しますと、賛美歌を歌ったり聖書を読むこともありますが、一般的に信者でなければ聴いているだけでも構いません。
参列者側のマナー
言葉のマナー
最も気を付けたいことは、キリスト教では>死は不幸な出来事ではないので「お悔やみ」は述べません。
遺族には下記のような挨拶がふさわしいとされています。
「安らかな眠りをお祈りいたします」
「ご遺族の上に、主のお慰めがありますように」
「お知らせいただきありがとうございます」
また、キリスト教の葬儀に参列する場合、故人が信仰されていた教派は調べておきましょう。
教派により式の呼び方、聖職者の呼び方も異なります。
聖歌・賛美歌など葬儀中のマナー
入場時は参列者全員が起立で迎えます。
信者でない場合は、聖歌・讃美歌斉唱には参加しなくても構いませんが、入場時に歌詞カードなどを受け取っている場合は、できる限り声を出すようにするとよいでしょう。
献花、供花のマナー
係の方に一礼してから両手で御花を受け取り、花の部分が右になるようにして持ち、90度時計回りに回転させ、茎を祭壇に向けてから献花台に置きます。
頭を下げて目礼し、自席に戻ります。
香典のマナー
香典とは故人に対する供養の気持ちを表すために、本来は線香や花を供物として供えますが、現代では香典と称した場合は現金を指します。
プロテスタントでは「御花料」、カトリックでは「御ミサ料」と書かれ、百合の花または十字架の文様がついた不祝儀袋を用意します。
不祝儀袋の表書きの記名には、悲しみの涙で文字が滲んだとの気持ちを込めて、薄墨を用います。
キリスト教での服装マナー
日本では、キリスト教の葬儀でも礼服または黒を基調とした喪服で参列するのが一般的です。
女性の服装マナー
女性は光沢のない黒一色のワンピース、アンサンブル、スーツ(ブラウスも黒)などを選び、襟が開きすぎていない服を選ぶようにしてください。
黒色のストッキング、靴には飾りや光沢のない黒のパンプスがよいでしょう。
アクセサリーは白か黒の真珠またはオニキスを身に着けます。
長い髪はまとめ、メイクはナチュラルなものであれば問題ありません。
夏場でも五分袖または七分袖、スカートはひざが出ない長さのものが最適です。
ハンカチは黒または白無地、傘は黒、グレー、紺、ない場合は透明のビニール傘を使うようにしてください。
男性の服装マナー
男性の服装は、ブラックスーツが一般的です。
上着はダブルでもシングルでも構いません。ズボンの裾はシングル、ワイシャツは白無地、ネクタイ(ネクタイピンはつけない)は黒無地、靴は黒の革靴、靴下は黒無地のものを選ぶようにしてください。
子供の服装マナー
子供の場合は、幼稚園や学校の制服があれば、それが礼服となりますのでそれを着ます。
制服がない場合は、黒や紺、グレーなどの地味な色の装いであれば問題ありません。
喪主側のマナー
香典返し
キリスト教では本来香典返しの習慣はありませんが、仏式や新式の習慣が影響したのか、日本では贈り物を送るケースが見られます。
プロテスタントでは、死去1カ月後に行われる「昇天記念日」ののちに、ご挨拶の贈り物をされることが多いようです。
カトリックでは、死去30日目に行われる「追悼ミサ」ののちに、ご挨拶の贈り物をされることが多いようです。
キリスト教の葬儀の相場
キリスト教の一般的な葬祭費用は以下の通りです。
- 一般葬:35万円~100万円
- 家族葬:30万円~80万円
- 一日葬:20万~50万円
※費用は事前に調べ、シミュレーションしておくことも大切です。
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